1カ月で2万ものメッセージが集まった
人生に当たり前なことなど何ひとつないことはわかっていたが、アドベンチャーワールドでパンダに会えることは、誰にとってもフェアであり、(希望的観測を大いに含んだ)あたり前に近いものだと思っていた。同時に、アドベンチャーワールドがそのためのありとあらゆるベストな取り組みを続けてくれていることに感謝もしていた。もしかしたら、パンダがやって来る30年以上前からここを知る人からしたら、パンダがいてくれた30年間がミラクルだっただけという感覚かもしれない。
ただ、偶然か必然か、パンダが持っている、他には例えようのない不思議な魅力や愛おしさを目の前で感じてしまった人々には、そのような頭の整理はつかない。それに駅の看板やらサービスエリアの食堂など町のいたるところにあったパンダのモチーフやフォトパネルは、少しずつ消えていってしまうのだろうか。それとも、パンダとともに美しい時間を過ごした思い出のアイコンとして残っていくのだろうか。もしかしたら、アドベンチャーワールドのパンダ・オリジナル・アイテムなども消失してしまうのだろうか。それも気になってしまう。
「現在、120種1600頭の動物がアドベンチャーワールドにいます。パンダがいたときも、いなくなった今も、パンダが紡いできてくれた命のバトンを、動物たち一頭一頭に光を当てて発信していくことには変わりません。これまでもイベントはパンダに限らずにいろいろやってきていますので、改めてそちらにも注目をして、ぜひ遊びにきていただけたらと思います。
また、歴代20頭のパンダたちに焦点を当てた新商品『PANDA JOURNEY -しあわせの足あと-シリーズ』が発売されました。第5弾まで展開されるのでお気に入りのアイテムを見つけていただけたら嬉しいです」(長谷川さん)
パンダの旅立ちに際してのイベントでは、オンラインだけでなく地域の学校や現地からもたくさんのメッセージが集まった。旅立つまでの1カ月間で、それは2万通ものメッセージになっていた。スタッフたちは、多くの人々の思いに支えられてきたことを改めて実感することになったという。その思いを受けて、アドベンチャーワールドではパンダだけでなくいろいろな動物の素晴らしい姿を発信し続けてくれるに違いない。
余談だが、イベントを手がける広報スタッフならではの目線がおもしろかった。それは、スタッフが(撮りたいなあ。ファンの皆さんにこう見せてあげたいなあ)とイメージしているシーンを、まるで察知したかのようにフォトジェニックしてくれるのが永明だったとすると、良浜はその逆で、浜家の中でも最もイメージと違うことをしてくれる、いくつになっても可愛らしいパンダだったという。広報スタッフの長谷川さんは、ご自身が撮影した、まさに布団! というような自由気ままな寝相で安眠している良浜の写真がベストショットだと笑って教えてくれた。
現在のイベント情報について少し補足する。1994年より30年以上にわたり日中双方でジャイアントパンダの保護・繁殖に取り組んできたアドベンチャーワールド。その歩みと想いを次世代へつなぐ新たな取り組みとして、パンダエデュテイナー(飼育スタッフ)とファンが一緒に創るクラブ活動「PANDA LOVE CLUB」がスタート。これまでパンダたちが過ごしてきたブリーディングセンターの屋外運動場を歴代のエデュテイナー(飼育スタッフ)によるガイド付きで特別に入場することができる特別企画など、年間を通じたクラブ活動として継続的に展開予定。
*パンダは正式にはジャイアントパンダと呼びます。このコラムでは、日々、筆者がそう呼んでいるパンダと書いています。
アドベンチャーワールド
所在地 和歌山県西牟婁郡白浜町堅田2399
電話番号 0570-06-4481(ナビダイヤル)
営業時間 10:00~17:00 ※季節により異なる
https://www.aws-s.com/
Column
アドベンチャーワールドから旅立ったパンダ
アドベンチャーワールドから、良浜(らうひん)、結浜(ゆいひん)、彩浜(さいひん)、楓浜(ふうひん)が旅立ってから数カ月が経ちました。パンダたちの旅立ちが決まってから、飼育スタッフが抱いた気持ちとは? また当日の様子はどのようなものだったのか。そして、広報スタッフが明かす、永明と良浜の裏バナシやアドベンチャーワールドの“これから”などについても伺いました。取材・執筆は、ただひたすらにかわいい、パンダを集めたパンダグラビア本『HELLO PANDA』の著者である小澤千一朗さんです。
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- writer
- staff
- 文=小澤千一朗
写真提供=アドベンチャーワールド
