伝統模様からレトロな水玉まで!肥前やきもの5産地の特徴

 土、山、川など自然豊かな環境が揃った肥前の各産地のやきものは、 それぞれ独自の個性を磨き上げ、暮らしの中に浸透させていきました。

 そのため、近くの産地で作られていてもまったく異なるやきものが点在しているのですが、産地の代表的なやきものの特徴をパッケージ化して手元にわかりやすくしたのが肥前やきものガラスペンです。やきものガラスペンで作られている5つのやきもの産地の代表的な特徴を辻さんに教えてもらいました。

■土のあたたかい風合いや素朴さの中に力強さが宿る「唐津焼」

 唐津焼は、桃山時代から作られた陶磁器文化のはじまりとされるやきものです。土のあたたかい風合いや素朴さの中に力強さの宿るやきものが多く、その魅力は茶の湯で「一井戸・二楽・三唐津」と格付けされてきたほど。

■個性を尊重したさまざまな技法を兼ね備えている「武雄焼」

 武雄焼は、鉄絵・緑釉・刷毛目等の技法を持ちます。多種多様な技法を持つ窯元が多く、個性を尊重したさまざまな陶磁器が見つかります。HIZEN5では、トルコブルーがきれいな作家さんや表面の化粧が得意な作家さんのガラスペンを多くラインアップ。

■ライフスタイルに合わせた技法で進化し続ける「有田焼」

 一番表現の幅が広いのが、有田焼。伝統的な有田焼は、繊細な白磁と華やかな絵付けが大きな特徴とされていますが、耐久性に優れていることから食器以外にも、アクセサリーや雑貨、美術工芸品など時代やライフスタイルに合わせて新しい有田焼が生み出されていきました。さまざまな有田焼を見かけるようになったのも、時代に呼応する形で技法を変えていった結果と言えます。

■水玉模様がレトロモダンな「肥前吉田焼(嬉野)」

 肥前吉田焼(嬉野)の代表的なデザインは、水玉模様。昭和レトロなデザインが、かえってモダンで新鮮に映ると幅広い世代から注目を集めています。スタイルにとらわれないさまざまなやきものを発信し、日本人好みの形やデザインを追求しているのが特徴です。

■将軍への献上品として特別に作られた緻密なデザインの「伊万里焼」

 厳選された原料や高度な技術、洗練されたデザインなど、伊万里焼の種類の中でも最高峰とされる鍋島焼は、江戸時代に将軍家などへ献上するために特別にあしらえたやきものです。新たな技術を取り入れながら、約350年の歴史と伝統を受け継いでいます。特にその洗練された緻密な絵付けは、大切な人への贈り物として、国内外で今も昔も変わらず愛され続けています。

300年の歴史を持つ和紙に書く上質なひとときを体験

 ワークショップでは、肥前やきものガラスペンで書いてみる体験をさせてもらいました。ガラスペンは、ペン先にインクを含ませて書く「つけペン」の一種で、毛細管現象を利用してインクを紙に運びます。実際に手に取ってみると、ペン先の形から、柄の長さや曲がり具合、重さ、太さ、持った時の肌触りまでひとつずつ違います。ペンは適度な重みがある方が書き心地がよい、というのも大発見でした。

 青色のインクは、鮮やかすぎず、落ち着いたトーンが美しいHIZEN5のオリジナルインク。そしてガラスペンを走らせる紙は、300年の歴史を持つ「名尾手すき和紙」。全国で唯一、梶の木を使って作られる名尾手すき和紙は佐賀県の伝統工芸であり、その技術は重要無形文化財にも指定されています。光に当てると透けるような薄さを持ちつつ、墨でにじまない特徴があります。さらに文化財修復にも使われる強さを備えているのだそう。職人さんたちが手塩にかけてつくったガラスペンを使って特別な和紙にしたためていくと、書くことがとても贅沢で上質なひとときに。

 イラストレーターのエイドリアンさんが、ガラスペンでワークショップ参加者の似顔絵をその場で描いてくれました。

 ボールペンでも書く機会が少なくなってきたけれど、だからこそ、ペンをとるときは心を豊かにするようなアイテムを選ぶのも風情があってよいですね。

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