画家・五月みどりの実力にリスペクトを捧げよ
『Midori Satsuki Post Card Book III』である。この画集においては、二科展にも入賞した技量を誇る画家としての五月さんの魅力に触れることができるのだ。早速、16枚が収められたこの絵葉書に無沙汰を詫びる文面をしたため、三親等までの一族郎党すべてに宛てて熱海駅前のポストから投函した。俺は東京で頑張っています!
五月さんの絵といえば、個人的に忘れられない思い出がある。
映画『TANNKA 短歌』である。
歌人・俵万智さんの小説『トリアングル』を原作に、作詞家の阿木燿子さんが初のメガホンを取った作品だ。
「mcシスター」のモデル時代から俺が注目してきた黒谷友香さんが初のヌードを披露した記念すべき映画であり、スティーヴン・ソダーバーグの『セックスと嘘とビデオテープ』にならって言えば『セックスと短歌とベリーダンス』とも表現すべき一種の怪作ではある。出鱈目のように聞こえるかもしれないが、本当にそういう内容なのだからしょうがない。
拙宅を訪れた来客が何だか退屈し始めたと思ったら俺はすかさずおもてなしとしてこのDVDを観せることにしている。すると、確実にリビングが温まる。読者のみなさんも自宅に常備することを心から激しくおすすめする。何なら俺の家に来れば観せてあげる。
この映画において、黒谷さん扮するフリーライターが通うバー(ママは高島礼子さん)の壁に、ストーリーの展開とはまったく関係ないのに、何だか必要以上に目立つ形で一枚の裸体画が掲げられている。そんなことも忘れた頃に映画は衝撃の結末を迎え、エンドクレジットの文字を呆然としながら追っていたら、そこには、「劇中絵画 五月みどり」とあった。
参りました。この俺がうっかり興味を抱くような範囲には、すべて、その浅薄な思い入れをたやすく見透かすように、五月さんが先回りしている。つまりは、五月さんの大きく温かい手のひらの上で踊らされていたに過ぎない。
2015.11.30(月)
文・撮影=ヤング