世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第109回は、小野アムスデン道子さんがアメリカはニューイングランドで体験したアウトドア三昧の旅をご報告します!

おいしいロブスターを守る海のおきてとは?

ロブスターを獲るラッキー・キャッチ号は、港町の運河から出発。

 アメリカ北東部、ニューイングランド地方は「新しきイングランド」という名前のように、1620年からイギリスのピューリタンが移住し、アメリカで最も古くから開拓されたエリア。メイン、ニューハンプシャー、バーモント、マサチューセッツ、コネチカット、ロードアイランドの6つの州からなる。

 食いしん坊な人は、貝がたっぷり入ったボストンクラムチャウダーやメイン州のぷりぷりなロブスターなどシーフードを思い浮かべるかも。かくいう私も、ニューイングランドへの旅で頭に思い浮かべたのは、まずこの2品だった。

町のパブの看板にもロブスターが登場。

 アメリカ東海岸の人にとっては、海と山、自然に恵まれた風光明媚な避暑地エリアで、ニューヨークあたりから家族で遊びに来る人も多い。今回は、メイン州の港町ポートランドやアパラチアン・トレイルを訪れ、お隣りニューハンプシャー州で珍しい歯車式のコグ鉄道で山に登り、湖でクルーズ船に乗って、ニューイングランド地方ならではの自然満喫の旅をした。

1858年建造の南北戦争時代の要塞がいまだに残る。

 まず訪れたのは、ごつごつした岩石海岸の海で、極上のロブスターが獲れるメイン州ポートランド。いい感じに古びたレンガ造りのビクトリア調の建物が並ぶオールドポートに面した運河から船に乗って、ロブスター漁を見る。

左:船上では、まず新たに仕掛けるワナ籠を準備。
右:せっかく獲れたロブスターも小さいとどんどん海に帰す。

 ロブスターは籠漁で獲る。餌のニシンを網袋に詰め込んでネットを張った籠に吊るす。3週間仕掛けた籠を引き上げて、代わりに餌付きの籠を降ろす。乗船客もゴム引きのサロペットをはいて、豪快に引き上げる籠を間近に覗き込むと、いるいる、爪の大きなあのロブスターが。

3.25インチより大きいか、きちんとメジャーで測る。
黒い爪の方がオレンジのものより堅い。まだ柔らかい爪の場合は、これももう1年獲るのを待つ。

 いっぱい掛かっていても、パッと見て小さなロブスターはどんどん放り投げて海に戻してしまう。ロブスターは、個体数を保つために3.25~5インチのオスと卵を持っていないメスしか獲らない。小さなロブスターは元々、網をすり抜けるし、ひっかかったものはちゃんと大きさを測って獲るかどうかを決める。

獲ったロブスターの大きな爪には、こんな風にゴムバンドをはめる。乗船に大人一人30ドルかかるが、船上のロブスターはなんと1匹6ドル。

 州からロブスターの漁師のライセンスを与えられるのは24名のみ。それぞれの漁の区画や仕掛けるワナ籠の数も決まっていて、とても厳しいものだという。「ロブスターを獲るっていうのはロブスターを守るってことなんだよ」とこの道30年のキャプテンは言う。そんな資格とルールがきちんとしたロブスター漁に、誇りを感じているようだった。

Lucky Catch Cruise(ラッキー・キャッチ・クルーズ)
所在地 170 Commercial St. Portland, ME 04101
電話番号 +1-207-761-0941
URL http://www.luckycatch.com/

ロブスター料理の名店「ディミロズ・オン・ザ・ウォーター」のユニークな看板。

 食事は、水揚げされた新鮮なロブスターを使った料理が食べられる港の名物レストラン「ディミロズ・オン・ザ・ウォーター」へ。スチームしたロブスターのツメから大きな身がぷりっと出て来て、溶かしバターの塩味に合う。指がバターでべたべたになってもお構いなし。夢中になって食べてしまうおいしさだ。

左:溶かしバターをつけて食べる、素材のおいしさそのものを楽しめるこのシンプルな食べ方が定番のロブスター。
右:クラムチャウダーにロブスターロールとロブスター三昧。

DiMillo's On the Water(ディミロズ・オン・ザ・ウォーター)
所在地 25 Long Wharf, Portland, ME 04101
電話番号 +1-207-772-2216
URL http://www.dimillos.com/restaurant/

2015.10.27(火)
文・撮影=小野アムスデン道子