ロブスターも山歩きも楽しめる！ 米国ニューイングランドの自然を満喫

アメリカ北東部最高峰を歯車式登山鉄道で登る

駅の近くでは、まだ勾配が緩く見えるコグ鉄道。

　メイン州から西隣りのニューハンプシャー州へ。こちらも北部一帯に歴代大統領の名前をつけた山々が連なるホワイトマウンテン国有林に数々のトレイルや湖があって、アウトドアを存分に楽しめる。まずは、世界最古の歯車式登山鉄道にして世界で2番目に勾配がきついというコグ鉄道でワシントン山(標高6288フィート＝約1917メートル)へ。

左：登るにつれて傾きが大きくなる。
右：この歯車で、山を登っていく。

　この1868年に開通したコグ鉄道。乗り鉄ならずとも、乗車して頂上まで往復するだけでかなりエキサイティングな体験ができる。列車が斜面を登ってゆくと、やがて、車内で立ったとき、床に対し身体が斜めの姿勢でも、そのまま保てるほど急勾配な場所もある(重力の不思議を感じるほど)。さらに、山麓の駅と頂上の気温差は約20度もあるというのが驚きだ(下はビーチサンダル、上はダウンジャケットほどの差)。そしてバイオ・ディーゼルの機関車に混じって蒸気機関車も走る。

急勾配を登っていく途中で、蒸気機関車とすれ違う。

　驚くのはシルヴェスター・マーシュという食肉加工業や交易で財をなした金持ちが、54歳になってから私財を投じて、技師の息子と共に設計から始めてこの鉄道を作ったということ。

山頂まで上がると景色が一変！

それでも下からトレイルを利用して登って来る人がいるから驚く。

　当時、ワシントン山は上流階級が訪れる避暑地だったが、ハイキングに出かけて山頂で嵐に巻き込まれて、遭難しかかったことから、山に容易に登れる手段を作るということに人生の後半をかけたのだ。今でも、山頂は下界とまったく様子を異にして、私が訪れた8月のこの日も濃霧と風が恐ろしいほどだった。

山頂の山小屋には、ミュージアムやカフェ、郵便局もあって、日本にも1ドル45セントでポストカードを送ることができる。

20世紀初めのアメリカの上流階級の雰囲気が今でも感じられるマウント・ワシントン・ホテル。

　下界に戻り、国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD)の設立という金融史に重要な意味を持つブレトン・ウッズ協定が結ばれた場所、ブレトン・ウッズのマウント・ワシントン・ホテル(オムニ・マウント・ワシントン・リゾート内)へ。ワシントン山の麓にあるスペイン・ルネサンス様式の華やかなホテルは1902年開業。今でもダイニング・ルームでは毎晩、生演奏が流れて、上流階級が集った当時が偲ばれる。

シックなインテリアが落ち着く、マウント・ワシントン・ホテルの広々したロビー。

左：ディナーに立ち寄ったアデーアも上品なホテル。
右：名前の由来となった令嬢アデーアの写真が廊下に掛かっていた。

　マウント・ワシントン・ホテルは現在もとても人気が高く、この日は満室。しばしの間、かつて夏をここで過ごした上流階級の人たちの気分を味わった後は、1927年に上流階級の娘の結婚のギフトに父親が建てたという建物をホテルにしたアデーア・カントリー・イン＆レストランでのディナーへ。ジョージアン復興様式のとてもかわいいホテルだが、敷地は24万坪を超える広さ。美しい庭と緑に囲まれている。

左：モダンなハノーヴァー・イン・ダートマスは2年前にリノベーションしたばかり。
右：客室は、チェックをあしらったシックな内装。

　ニューハンプシャー州、最後の明日はアイビーリーグの一つ、ダートマス大学がある街の見学からスタートし、切り立った絶壁に挟まれたフルーム渓谷のトレイルハイクに、ニューハンプシャー州最大のウィニペソーキー湖でのクルーズと盛りだくさん。

　大学が所有するモダンなホテル、ハノーヴァー・イン・ダートマスにチェックインして次の日に備える。

2015.10.27(火)
文・撮影＝小野アムスデン道子