注目の制作集団、agehaspringsがプロデュース
伊藤 「Wonderful Wonder World*」の歌詞に出てくる主人公は、Yun*chiのビジュアルとは少しギャップがあって、どちらかというと普通の女の子。でもそれが意外性になって、思った以上に共感できるところが、なんかカワイイ。
山口 作曲は、agehaspringsの飛内将大さんですね。agehaspringsは近年のJポップで最も勢いのある制作集団です。リーダーの玉井健二さんを中心に優れた作品を出し続けています。本作もそういうヒットの香りと今日性がある曲だなと思いました。
伊藤 ですね。それに、このシングルカップリングを含めた3曲のプロデュース、全体のバランスがよいですね。カップリング「Fairy*」のプロデュースをしている桃井はるこさんは秋葉原カルチャー出身の人ですよね?
山口 そうですね。この辺にもYun*chiの感度の良さが表れていますね。
伊藤 それに3曲目の「Dancing*」は、こだまさおりさんの詞に浅田祐介さんのプロデュースと“山口ファミリー”じゃないですか?
山口 私の知らないところで行われていることですけど(笑)、作品のクオリティは高いですね。英国のbo enを登用して、トラップミュージックなセンスを取り入れているやり方もカッコイイですよね。身内贔屓では無く売れて欲しいと思うCDですね。
そんな作品からどんな「妄想分析」が浮かびますか?
伊藤 原宿駅の改札に向かって緩やかなスロープを下ると、改札から7歩離れた向こうで彼が待っている。もう彼は私を見つけているけど、私は気づかないふりをする。彼は、ここだよ! と言わんばかりに、少し斜めに背伸びをしたような不安定な立ち方をし、右手は顎のあたりで小さく左右に揺れている。バカだなぁ、と思いつつも、まるでペットのように可愛くてしかたない。改札を抜けるあたりで、これ以上は気づいていないふりは出来ないと思い、彼を見つけた素振り。嬉しそうな彼の顔。不覚にも私の頬までが、恥ずかしいほど引き上がり笑顔をつくる。
二言三言、言葉をかわすと、予定していたような沈黙。なにか話さないと退屈させてしまう、そう思っているだろう彼の目が少し泳いで私で着地、そして照れ笑い。バカだなぁ、と思いつつも、まるでペットのように可愛くてしかたない。じゃぁ行こうか! と言ったか言わなかったか、どちらからともなく目的の店に向かって歩き出す。KIOSKの前で大きく深呼吸をする彼、緊張している様子を隠しているつもりの彼、まだ手を繋いでこない彼。
歩き始めて7歩で、外国人観光客に写真撮影を頼まれるハプニング。彼ってよっぽど人の良さそうな顔をしているんだなぁ、と思う。ヘタな英語で承諾し、人の良すぎるような顔で写真を撮って、ソーリー! ワンモアタイム! とか言っちゃってる。写真を撮り終えると、私にも謝る。バカだなぁ、と思いつつも、まるでペットのように可愛くてしかたない。歩道橋の階段を上るとき、彼の背中を見上げる。原宿の空をバックに彼の後姿が眩しい。ふいに彼が振り返る。何かを言ったけど聞き取れない。たぶん、手を繋ごうとか、そんなこと。そのとき、私は頭の中で思っていた。彼の後ろ姿……も好き。
もう無くなってしまった歩道橋。もう帰ってこないあの日。もういなくなってしまった、あのバカ。
山口 「甘すぎないスイーツ」というよりは、「酸っぱすぎない想い出」って感じ(笑)。
Yun*chi「Wonderful Wonder World*」
日本クラウン 2014年10月22日発売
1,143円(税抜)
■Yun*chiは、2012年にメジャーデビュー。ミニアルバム『Yun*chi』は、ミュージック・ジャケット大賞2013において大賞を受賞した。セカンドシングルとなる本作の表題曲は、NHK Eテレで放送中のアニメ「ログ・ホライズン」第2シリーズのエンディングテーマ。
■「Wonderful Wonder World*」作詞/Yun*chi、田中秀典 作曲・編曲/飛内将大
■オフィシャルサイトURL http://yunchi.asobisystem.com/
【動画サイト】
「Wonderful Wonder World*」
URL https://www.youtube.com/watch?v=U_UGCWXRUCg
2014.10.15(水)
文=山口哲一、伊藤涼