【WOMAN】
微笑ましさと懐かしさがあふれる、日々生まれる小さなめぐり合わせ
サメマチオが描く「縁」は、レンジが広い。主人公の子どもの頃の思い出と現状がオーバーラップしたり、妄想と現実が地続きになっていたり、この世とあの世が交差したり。卑近な触れ合いもあれば、時空さえ超えた関わり合いもある。
たとえば「慕情」で描かれるのは、素性も知らない女性客に片思いする風呂屋の番頭の心象風景。キモイという自覚はあるのに、番頭の心はキラキラ弾んでいる。「訪問客」は、甘味処に連日やってくる客が四十九日を待つ幽霊、という話。だがそこで働く一家はそれがわかっているのに悠然と幽霊に人情をかける。
登場人物が背負うドラマは最小限に伏せてあって、それゆえに彼らのめぐり合わせには、逆に不思議な広がりが生まれるのだ。すべて架空のエピソードなのに、読者自身の思い出を引っ張り出してもらったかのような……。リアルなノスタルジーに心をくすぐられてしまう。
『マチキネマ』 サメマチオ
子ども時代の迷子体験を考察するユーモラスな「My Way」や、年頃になってひと皮剝けた女の子を見る高校生男子の千々に乱れる心境を描く「太陽の季節」など、あるある感もたっぷり。青春の風景を複眼で見ると、こうなる!? 現在、シリーズ「2」まで刊行。
宙出版 619円
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Column
男と女のマンガ道
男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!
2014.08.04(月)
文=三浦天紗子