洋館をリノベーション…建築費は予定の2倍に

――ブランドとしての哲学や姿勢を教えてください。

 100年先でも愛され、お客様に自分のブランドだと思ってもらえるような物語をどう創っていけるか。それが、「メゾンカカオ」が意思決定をする際に柱としている考え方です。

 第一号店である小町通り店には、今でも修学旅行生たちが小銭を握りしめてタルト・ショコラを買いに来てくれますし、丸の内店では何万円分ものチョコレートを一度に買い求めるお客様もいらっしゃいます。

 つまり、レンジがとても広いんです。あまりマーケティング的に考えたことはなく、お店の場所やプロダクトによって高いものは高いし、求めやすいものは求めやすい価格になっていて、そこから選んでいただくのはお客様。

 ブランドを長く続け、磨いていくための1つの要素として、ラグジュアリーのあり方も学びますが、ラグジュアリーブランドになりたいわけではありません。僕たちのチョコレートが、ハレの日やお持たせとして華を添えられるものでありつつ、日常的で親しみのあるものでもありたい。そうした独自のチョコレートブランドとして、常にブルーオーシャン(未開拓のマーケット)を創造し、哲学や情熱、背景にあるストーリー性によって価値を高めていけるよう、常に挑戦を続けています。

――2025年11月にオープンした新本店への想いは?

 新たな本店となったこの建物は、もともと「ラルフローレン」の店舗で、鎌倉で唯一の洋館として人々に親しまれてきた場所です。

 小町通りに「ca ca o」(現「MAISON CACAO」)の小さな第一号店を開いた当時の僕にとっては、「いつかこういうところでチャレンジしてみたいな」と思いながらも、とても手に届かない憧れの場所でした。それから月日は流れて3年前、あるご縁からお話をいただいてこの建物を譲り受けることとなり、「思っていれば、目指していく方向に繋がっていくんだな」、と。

 ところが、そのときには「ラルフローレン」ではなく銀行として使われていて、中の構造も大きく変えられた状態だったんです。そこで、「ラルフローレン」当時の設計図を見直し、後から取り付けられたエレベーターを取り払い、もともとあった階段を一から設置して、2年10カ月かけてかつての姿をよみがえらせました。

 なぜそこまでしたのかというと、鎌倉の人たちにとってこの建物は、母の日に家族で食事をしたとか、成人式のスーツをあつらえたとか、彼女への初めてのプレゼントを買ったとか、鎌倉の人にとって思い出が詰まった場所だったから。僕らがここを譲り受けるとならば、鎌倉の人たちが「あの頃はこうだったよね」と思えるようにしたいとも思いましたし、未来に繋いでいかれるようなものにできないかな、と思いました。ただ、それによって自分たちのキャパをはるかに超え、当初予定されていた建築費は2倍に膨らんでしまって(苦笑)。でも、「行くしかない!」という気持ちでオープンに漕ぎつけた、という感じです。

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