理解に苦しむ返答を繰り返す家族

「娘達の名前を考えるときに参考にしていたらハマっちゃいまして」

「私はあまり詳しくないのですが、良いものなのですか、こういうの?」

「ええ、良いものだと思いますよ。ほら、この辺は星がよく見えるじゃないですか。引っ越してきて夜空見たときなんか感動しちゃって」

「本当にこの辺りは綺麗ですよ。でも、僕が写真撮っていたら妻が、『写真なんかいいからちゃんと流れに乗らないといけないよ』ってうるさく言うんですよ~」

「はは……この辺りが気に入ってもらえてよかったですよ」

 何気なく聞いた本の話題でしたが、返ってきたのは少々理解に苦しむ答えばかり。愛想の良さとは裏腹に、2人との会話は主語や内容、時系列が飛び飛びで妙に掴みづらかったのが気になりました。

 とはいえ、溢れんばかりの新生活への期待で少々浮き足立っているのだと思えば、それも可愛らしく思えたそうです。

「じゃあ、諸々の町内会会費の徴収方法やご案内はこのプリントにまとめていますので、ご覧になってもらえれば」

「ありがとうございます」

「バイバイ!」

「はい、バイバイ! 2人とも挨拶ができてえらいねぇ」

 玄関先で手を振る一家にお辞儀をして、Oさんは家を後にしました。

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