ゲームを買ってもらうために仕事をがんばった

――じゃあ、知らずに加藤夏希と会話をしていた人がいっぱいいたんですね(笑)。加藤さんご自身は芸能の仕事を楽しんでやっていたんですか。

加藤 秋田から飛び出して、親の目がない東京に行って楽しんでいましたね。もちろん変な遊びとかはしてないですよ。ただ非日常がすごく楽しかったです。それこそセーラームーンみたいな感じで、変身して仕事現場では別人になるような感覚でした。

 反面、仕事というよりは遊びの延長、学校の部活動の感覚でいたので「この役は絶対取らないとだめだよ」とオーディション前に事務所の方にプレッシャーを与えられるんですけど、あまり響いてなくて(苦笑)。最終的に事務所も「わかった。このCMを取れたらこのゲームを買うから」と提案をしてきて、そのゲームを買ってもらうために頑張るという感じでした。

――ゲームが全ての活力ですね。

加藤 なっていましたね。夜早く寝て深夜2時とか3時に起きて勉強せずにゲームをしてましたね。ゲームばかりしていると秋田にいれば怒られるんですが、東京だと怒られないので。事務所の寮があったんですが「仕事が終わって寮に戻ったらゲームができるからきょうは頑張ろう」と思ってました。

――当時の撮影現場は今よりはちょっと厳しかったのではないですか。

加藤 ちょっとどころじゃないぐらい(笑)。でも「いいね、いいね」とヨイショされるより、ちゃんと見てもらえているんだって嬉しかったですね。「もう1回」「もう1回」と、延々と正解のわからないリテイク回が続いていくんですけど、でもそこにはちゃんと愛情があって、自分を育ててくれているんだというのは、わかっていました。

同級生はロビーナ役が私だと気づいていなかった

――仮面ライダーや戦隊シリーズといった特撮ドラマの撮影現場は厳しいと聞くのですが、「ロボコン」はどうでしたか。

加藤 「ロボコン」は平和でした。アクションがなかったので。あとはセリフが全部アフレコなんですよ。それがむしろ大変でしたね。声優さんたちに交じって、自分の映像に合わせて自分のセリフを言わなきゃいけないんですが、いつも「ロビーナちゃんだけ別録りで」となって、声優のみなさんのアフレコを見終わってから1人だけ何度もやっていました。

――秋田の学校の友達や周りの人たちは加藤さんが芸能人になったことについてどんな反応をしていたんですか。クラスメイトに芸能人がいるとすごいことになりませんか。

加藤 もともと友達がたくさんいるタイプでもなかったんですよ。それにロビーナ役をやっていた時は金髪のカツラをかぶってたので、同級生は私だとは思っていなくて。

――え、そんなことってあるんですか?

加藤 クラスの子には「体調悪いの? また休んでたね」って聞かれて「そうなんだ」とか答えてました。でも中学に上がる時にバレて「ねえ、東京に行ってるんでしょ?」「なんで教えてくれないの?」って言われました。

「つらすぎて現場に来なくなる子もいた」「常に狙われてる精神状態になって…」加藤夏希が明かす、『バトル・ロワイアルII』撮影現場の“過酷すぎる舞台裏”〉へ続く