こよなく愛する由布院「STAY玉の湯」
――雑木林の中に離れ形式の客室がゆったりと佇む。小林秀夫や池波正太郎、大林亘彦らに愛された文化的な匂いがそこはかとなく漂い、それは暖炉のあるラウンジで特に感じる。棚には古い雑誌や良書が並び、蓄音機もある。「玉の湯」の好きなところを挙げたらきりがないが、名物「クレソンと鴨の鍋」も再訪の動機になる。(中略)
そんな「玉の湯」が新しい宿「STAY玉の湯」を2024年1月にオープンさせた。泊まった翌日、目覚めて最初に目に入ってきたのは、青空にくっきりと浮かび上がる由布岳だった。雲ひとつない空によく映えていた。前夜、遅くに宿に入ったから、この光景は見えなかった。ベッドから眺める至福の時に、笑みが浮かんだ。(中略)
ロビーには由布院で評判のベーカリーのもちもちとしたパンが並び、辰巳良子さんレシピのスープに果物、お菓子も少々。十分満足。
そもそも由布院の町づくりは、昭和40年代に溝口薫平さん(「玉の湯」会長)をはじめとする当時の若手旅館経営者たちが、ヨーロッパの温泉保養地を訪ねたことに始まる。この頃からの夢だった滞在型の宿を「STAY玉の湯」で実現したのだそうだ。素泊まりで1泊18,000円から。先述のような軽い朝食が付き、客室にはレンジ、共有スペースにはランドリーなどもある。(後略)
本エッセイではこのほかに、ひとり温泉で楽しめる「おいしい朝ごはん」、「おいしいお土産」、日本各地の温泉ルポやポルトガルでの温泉体験などが紹介されています。大人の旅のひとつの在り方として「ひとり温泉」は定着し、もしかしたら旅の主流になっていくかもしれない、と語る山崎さん渾身の1冊。ぜひあなたも自分にとってちょうどいい「ひとり温泉」を見つけてみてはいかがでしょう。

おいしいひとり温泉はやめられない
著者 山崎まゆみ
定価 946円(税込)
河出書房新社
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