2007年に製作され、今もなお熱狂的なファンをもつ台湾青春ラブストーリーの名作『言えない秘密』が新たによみがえった。韓国版となる本作は、原案に忠実ながらも独自の設定と解釈を盛り込んだ初恋ファンタジーだ。

 ソ・ユミン監督は「この映画の脚本を書き上げたあと、ユジュン役として最初に思い浮かべたのがド・ギョンスでした」、と明かす。「アーティスト特有のロマンティックな空気感、雰囲気のある声。ぎこちなくなりかねないセリフもさらりとこなす演技力に驚きました」

「新しい一面を見ていただけるチャンス」

 映画『神と共に』2部作(17~18年)や『スウィング・キッズ』(18年)、時代劇ドラマ『100日の郎君様』(18年)などで俳優として高く評価されるギョンスだが、現代劇の正統派ラブストーリーに挑戦するのは意外にも初めて。「これまではお見せできなかった、自分の新しい一面を見ていただけるチャンス。ユジュンのピュアな感情をしっかりと伝えることにこだわりました」と話す。

 役柄の心情に深く寄り添えるよう、ユミン監督とは撮影現場でも話し合いを重ねた。原案の『言えない秘密』は大好きな映画だそうで、「何度も繰り返し観ています。観るたび夢中になってしまう」という。

 天才ピアニストという役柄とあって、劇中にはピアノ・バトルや連弾を含む数々の演奏シーンもある。ピアノはまったくの初心者だったが、わずか3週間という短期間で特訓を積んだ。「とはいえ、もちろん本物のピアニストのように弾くことはできません(笑)。実際の映像を何度も見ながら、彼らの動きや表情を徹底的にコピーできるよう努力しました」

 ヒロインのジョンア役は『鋼鉄の雨』(17年)や『声/姿なき犯罪者』(21年)のウォン・ジナ。ピアノの旋律をめぐる秘密を抱えた役どころで、ギョンスはその演技を「キャラクターの強さと繊細さを見事に表現するお芝居でした」と称える。

2025.10.18(土)
文=稲垣貴俊