フリーアナウンサーの赤江珠緒さんが、TBSラジオの平日帯の人気番組『たまむすび』のパーソナリティを終え、人生の比重を大きく変えたのは48歳の時。
当時、番組内で決断の理由を問われた赤江さんは、時間という言葉を繰り返し口にしながら、こんなふうに胸の内を明かしていた。
「5歳の娘は、まだ時計を読めない。それは、時間の概念がまだないという、人として限られた、貴重な時間を彼女が過ごしているという事だと思う。そんな時間概念がない時を、一緒に、ゆっくり味わってみたい」
あれから2年半――。50歳になった赤江さんの日々の生活、当時の決断の背景とは?
発売中の『週刊文春WOMAN 2025秋号』より、一部を抜粋・掲載します。

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実際の感覚では「5倍働かなきゃ??」でした
2017年3月に産休に入り、7月に女の子を出産。翌年の4月には『たまむすび』に復帰しました。
子育てと仕事の両立は、想像していた以上に大変でした。実は、子どもを産む前は「自分が頑張ればなんとかなるんじゃないか」と、心のどこかで思っていたんです。 テレビとラジオで朝昼の帯番組を2つ同時に回した経験があったし、若い頃は徹夜も慣れっこだったので、体力と気力には自信があった。
「1と1で2倍働けばいいのでは?」と高を括っていましたが、実際の感覚では「5倍働かなきゃ??」でした。
何が大変かというと、徹夜や、自分で時間を決めての早起きと違って、いつ起こされるか分からない睡眠リズムの摑めなさに始まり、おもちゃや本を買って揃えたり、保育園の準備や連絡をしたり、子育ては細かいタスクが次から次へと襲ってくる。
子育てと並行して仕事のほうも、「インタビュー記事を書かなきゃ」「番組のゲストの方について、もっと調べなきゃ」「あのニュースを見ておかなきゃ」……と、やらなくちゃいけないことにずっと追われている感覚でした。
「このままでいいのかな」と思いながらも、自転車操業なので一瞬たりとも止まれない。子どもの世話をしながら明日は番組で何を話そうと考えているうちに、もうその明日がやってきて……。2年くらい、自転車を漕ぎながら悩む状態が続きました。「タイムボカンシリーズ」のエンディング、ドクロベエに追われて、ひたすら漕ぐ自転車……みたいに。
2025.10.02(木)
文=「週刊文春WOMAN」編集部
写真=鈴木七絵