50歳を前に立ち止まった
「立ち止まってみよう」という気になったのは、50歳を手前にして、人生の残り時間が見えてきたから。
「君の行く道は~果てしなく遠い~」というフレーズで有名な、「若者たち」という曲がありますよね。あれを口ずさんでいたときに、「いや? 私、そんなに遠くないじゃん?(笑)」と、ふと思って。
「何者かにならなきゃ」、「成果を出さなきゃ」と、キャリアのことだけ突き詰めて突っ走っていたら、あっと言う間に50歳になろうとしている。この調子で生きていたら、70歳もすぐに来てしまうなと。

残された時間がそんなに多くないなかで、仕事と育児の両方を追いかけることは体力的にも難しい。ここらで自分の人生の目標地点を、もうちょっと明確にしておいたほうがいいなと思い始めたんです。
私は「番組のMCになりたい」といった出世願望はあまり強くないのですが、アナウンス技術を高めたいという欲求はすごくあって、「あの人みたいに朗読が上手くなりたい」、「今度はもっと上手く司会をやりたい」というふうに、自分が成長することを目標に頑張ってきました。
だけど、「自分が成長する」という点では、仕事もだけど、「あれ? 今の私には子育てから学んでいることが多い??」なんていう事にも気づきはじめたんです。
親になって気づいた自分のエゴ
仕事はそれなりにキャリアも重ねて、昔より出来ることも増えた感じがしていましたが、子育てでは「私、人として全然ダメじゃん」と思い知らされることばかりでした。自分が頑張れば結果が出る仕事と違って、子育てって子どもに頑張らせても結果出ないじゃん‼って(笑)。
私は自由奔放な子ども時代を送ってきたので、健康に育ってくれさえすればいいと、子育てに関してはかなり寛大なつもりでした。それでも、実際に子を持つと、「こうあってほしい」という理想をすごく持っちゃっていたんです。ちょっとでも理想からズレると、「え、なんで?」って。
親って自分が出来なかったことは棚にあげて、自分が出来たことが出来ないと、「えっ? なんで、出来ないの?」って思ったり、周りと無意識に成長度合いを比較しちゃったりしてしまう。それは、子どもにいい人生を送ってほしいと思っている愛情でもあるけど、裏を返せば、めちゃくちゃダメ出ししてるってことですよね。
2025.10.02(木)
文=「週刊文春WOMAN」編集部
写真=鈴木七絵