アナウンサーで2人の男の子を育てる青木裕子さんのFraU webの人気連載『子育て歳時記』が書籍化された。

 子どもにとって「本当に良い教育」とはどのようなものか? ひとりの女性である自分が「母親」としてすべきこと/したいことは何なのか?

 さまざまな情報があふれる中で、試行錯誤しながらも本気で子どもと向き合い、共に過ごす日々を謳歌する青木さんの姿は、こうすれば幸せになれるという「正解」が見えない時代に、子どもの有無に関わらず、すべての人に一歩を踏み出す勇気と希望を与えてくれるはずだ。


ひとには「なるようになるよ~」と言えたけど…

――青木さんはもともと子育てに関して、どのような思いを抱いていたのでしょう?

 私自身、11歳歳の離れた妹がいて、大学生の時に保育園でアルバイトもしていたので子どもと接する機会はあった方で、子どもを育てることに過剰な理想は持っていないつもりだったんです。でも、いざ自分が子どもを育てる立場になってみると、子どもに対して感じる責任やプレッシャーが想像よりも大きくて。人の子供には自由にさせとけばいいじゃん、なるようになるよーって気軽に言えたことが、自分の子供だとそうは言えなくなる。え、自由ってなんだろう? のびのび過ごさせるにも実はすごく準備が必要だよなって、悩んでしまう場面が多かったんです。

――過干渉にはなりたくないけれど、ただ放っておくのも違う。子どもにとって「本当に良い教育」って何なんだろうと悩んでしまう心中は、すごく共感しました。子どもが可愛いのは当然ですが、自分の選択が子どもの人生を左右してしまうかもと考えると、実際かなり恐怖ですよね。

 本当に恐怖ですね。子育てって、親が責任を持たないといけないし、基本的には代わってもらえない。仕事だと他に代わりはいるし、途中でやめることもできるけど、子育てはやめることもできない。その重みを考えると今でも呆然とします。

――そんな不安の中で、青木さんはどのように自分なりの向き合い方を見つけていったのでしょう?

 最初は自分が受験や仕事を乗り越えてきたのと同じように、子育てにも何らかの「正解」があると思っていたんです。自分が若かった頃は、受験もとにかく偏差値を上げて、いい学校に入ることが「正解」だったし、仕事も今みたいにコンプライアンスもない時代ですから、何かあれば24時間対応するのが当たり前と思って、がむしゃらに働いてきた。でも、今の時代は昔みたいに「この道が正解」みたいな絶対的なものがなくなって、多様な道が認められるようになった。それだけに、親としては子どもにどういう道を示して、どういう力を付けてあげればいいのかわからなくて、最初はすごく悩みました。

2024.05.02(木)
文=井口啓子
撮影=山元茂樹