青木モードと矢部モード

――人は誰もがいろんな顔を持って生きていますが、青木さんは新たに加わった「母親としての顔」をめいっぱい、楽しまれていそうです。

 そうですね。局アナだった頃は完全なオフがなくて、「仕事人としての顔」が自分の大半を占めていましたが、今は仕事も個人でやっていますし、母親だからこその仕事もできましたし、子どもを育てているからこその仕事もありますし、いろんな顔を持ちながら、それらが相互に作用して、ひとりの人間として豊かになれたなという気がします。

――青木さんの中で「母親である自分」と「仕事をする自分」に、区別はありますか?

 私の場合、仕事をするときは苗字が「青木」で、母親のときは「矢部」なので、同じ自分でもまた別のモードになってるかしれません。

――子供を持つという選択をポジティブに考えにくい時代でもありますが、そういったことで悩む女性に伝えたいことはありますか?

 どんな選択をしても間違ってることは絶対ないし、どんな選択をした方がいいというようなことは思いませんが、子育てしている身としては、子育ては楽しいよってことはお伝えしたいです。

 どうしても今って子育ては大変だというメッセージの方が大きく聞こえてきてしまう。もちろん、実際に大変なことはたくさんあるし、それを分かち合いたい気持ちは私にもあるんですが、辛いという情報ばかりが入るのは当事者としては違うぞとも思うし。子育てを前向きな選択肢のひとつとして入れて欲しいので、大変だけど、でも楽しいよ、と私は伝えたいと思っていますし、伝える必要もあるなとも思っています。

――「正解」がない子育ての中で、青木さんがこれだけは大切にしているということがあれば、教えてください。

 本気で向き合うこと、でしょうか。先日、夫(ナインティナインの矢部浩之)と“一生懸命って届くよね”って話をしたんです。なぜか人の心を打つ人っていて。それってやっぱり、相手に対する熱意とか本気度みたいなことなのかなって。だから、私が子どもと取り組んでいることは、全て正しいとは絶対に思わない。間違ってることもいっぱいあると思うんですけど、でもあなたと一生懸命に向き合っていますよということだけは伝えたいし、それが伝わるように日々本気で向き合いたい。それは親子の関係はもちろん、全ての人間関係で大切にしたいですね。

3歳からの子育て歳時記

定価 1,650円(税込)
講談社
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

青木裕子(あおき・ゆうこ)

1983年1月7日生まれ、埼玉県出身。TBSテレビアナウンサーとして『サンデージャポン』や『News23X』などを担当。2012年12月末にTBSテレビを退職。2014年に第1子、2016年に第2子を出産し、現在はフリーアナウンサー、モデル、ナレーション等幅広く活動中。

2024.05.02(木)
文=井口啓子
撮影=山元茂樹