旬な人が深くハマっている趣味について聞く連載。第20回は、幼少期より空手・キックボクシングで活躍し、ボクシング転向後も快進撃を続ける天才格闘家・那須川天心さんが登場。試合前に必ず神社を訪ねるという那須川さんに、その魅力を伺いました。『週刊文春WOMAN2025秋号』より一部を抜粋・掲載します。
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お札や掛け軸を飾るための和室を作ったほど、神社が好き
世界タイトル戦を控えた夏、東京・世田谷にある松陰神社に一人ふらりと現れた那須川天心。拝殿の前で作法にのっとり二拝二拍手一拝した後、境内をゆっくり歩き、大木に手を当てた。
「神社って気がいい土地に建てられていますよね。僕にとって神社は“心を映す鏡”。心がざわつく時に行くと、まるで鏡みたいに今の自分がわかる。『あ、乱れてる』って気がつけて、平常に戻れる場所です」
試合当日の朝には、“勝負の神様”として知られる東京・原宿の東郷神社を必ず参拝。その信心深さは本物で、自宅の中にも“祈りの場”を作ったほどだ。

「僕が神社好きだと知った周囲の方々からいただいたお札や掛け軸などがめっちゃあったので。せっかくだから、飾るための和室を作ったんですよ。神棚の大きい版みたいな。でも最近は、自分にとって大事なのは“モノ”じゃないんだと気がついて。勿体ないですけど、一旦すべてお焚き上げしたほうが良いかもなと考えています」
どんなに遠方でも、足で訪ねて自分の耳目で体験することに重きを置く。効率よりも手間暇をかけることに価値を見出すタイプだ。
「『古事記』の中で、世界の始まり、天地が分かれた瞬間に生まれたとされる三柱の神々が描かれているんです。その造化三神のうち一柱が奉られた京都の神社を、去年親友と訪ねました。伊勢神宮の外宮に祀られた豊受大神がもともと降り立ったとされる京都の天橋立にある眞名井神社も行って。でも、僕の場合はただお参りするというより、宮司さんにその神社にまつわる話を聞くのが好きなんです」
2025.09.29(月)
文=大西展子、「週刊文春WOMAN」編集部