
12歳で初めて立った『ラスト サムライ』の撮影現場で、映画づくりの魅力に心を奪われて以来、演じることだけでなく「ものづくり」に関わることを喜びとしてきた、と語る池松壮亮さん。俳優として生きて行くことを決めたきっかけや、次世代の俳優に託す思いを聞きました。
大学時代は、授業をサボって映画館に入り浸る毎日

――池松さん演じる青葉一平は、自身の職業が天職かどうか悩んでいます。池松さんは、幼い頃から始めた俳優という仕事を続けていく上で悩んだことはありますか?
社会に出てどんな仕事に就こうかと考える前に、たまたま俳優という仕事に出合いました。当時はこの仕事が100%好きだったわけではなかったけれど、現場に行ったら楽しいことや刺激的なことが多くてよく理解できないまま続けることができていました。そういう感覚で10代を過ごしてきたんです。俳優を生業としてみようとはっきり決めたのは、大学進学を決めたタイミングです。
――俳優として生きていくと決めたからこそ、大学では映画を学んだのですね。
はい。自分の中でこの世界でやっていくことの覚悟を決めるための大学進学だったので、在学中に、今後の人生についてたくさん考えました。東京に出てきて、福岡にいたら知り得なかった映画にもたくさん出会いました。大学生活は大人になるまるまでの最後の猶予のような4年間でした。
正直言うと、学校はサボりがちでした。ちゃんと卒業こそしましたけど、仕事だと嘘をついて授業をサボって、映画館や喫茶店に入り浸ることもしばしばありました。映画や人生のことを考えていたら、大学に辿り着く前に日が暮れてしまって。自分は何がやりたいんだろう。自分は何を求めているのだろうということを必死になって考えていました。
そんなふうに過ごした日々が今に活きていることは間違いないなと思います。そうした時間が自分には必要だったんだと思います。

――ずっと俳優という仕事を続けてきて、仕事とプライベートとのバランスに悩んだことはありますか?
もちろんオンオフありますが、あまり仕事とプライベートを切り分けて考えていないというか、いまいちその感覚がないんです。この仕事は僕にとって趣味に近いのかもしれません。情熱をかけられる好きなこと、というような感覚です。
ただ、5年前のパンデミックを経てさまざまな「バランス」について考える機会はもらいました。年齢的なこともあるのかもしれませんが、体と心のバランスとか、働くことと休むことのバランスなどを前よりも考えるようになりました。日々ベストを目指し、持久力や忍耐力を持続させながらこの仕事に取り組むためにも、そうしたバランスについて気にかけていかなければと思っています。
2025.09.24(水)
文=高田真莉絵
撮影=榎本麻美
ヘア&メイク=内藤歩