日本ではまだ特別なことと思われがちなカウンセリングですが、エッセイストの犬山紙子さんは「カウンセリングは人生で一番いいお金の使い方」だったと語ります。夫の劔 樹人さんとともに受けたカップルカウンセリングのことなど、カウンセリングの本当のところを伺いました。
夫婦でカウンセリングに通っていました

――最初の3回ほどは犬山さんおひとりでカウンセリングを受けられたそうですね。
犬山 もう7、8年前ですが、私には怒りっぽいところがあり、予定通りに物事が進まないとか、空腹で機嫌が悪いなんていう理不尽な怒りをつるちゃん(劔さん)にぶつけてしまっていたんです。でも、つるちゃんは穏やかで、私を責めない人。そんな彼を理不尽な怒りで追い詰めるのではないかという不安と、そうなる前に自分の性格を見つめ直したいという思いが、カウンセリングを受けるきっかけになりました。最悪、ハラスメントにも繋がりかねないなって。
劔 でもカウンセリングに通って、今は理不尽に怒ることはなくなりました。むしろ優しい(笑)。
――日本ではカウンセリングが身近な存在ではない中、なぜ、受けようと思われたのでしょう?
犬山 元々本を読んでいたり、友人が行ったりとしている中で偏見はなかったです。ただ、初回からしっくりきたかというとそういうわけではなく、最初行ったところは話も聞かずに「ああ、よくあるこのケース」というように決めつける人で嫌な思いをしたので、初回で行くのを辞め、慎重に違うカウンセラーを探しました。
――信頼できるカウンセラーに出会うまでに数カ所回るとなると、費用もかかりそうです……。
犬山 地域によって30分5000円とか45分8000円とか相場が違うので、一度調べてみると印象が変わるかもしれないです。
劔 僕は、カウンセリングに使うお金は贅沢だと感じていたから、最初は行くのを躊躇しました。
犬山 でも、私が強く勧めて。
劔 行ってみたら、カウンセリングは人生の必要経費だと考えが変わりました。家電とかと同じで、人の心もプロの手を借りて定期的にメンテナンスした方が快適に過ごせます。それに、人も夫婦関係も年月とともに変化するのが当たり前。メンテナンスを怠って関係が破綻したり慰謝料を払ったりすることを考えたら、カウンセリングは断然コスパがいいです。
2025.09.21(日)
文=今富夕起
写真=平松市聖
CREA 2025年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。