多くの作品がベストセラーになっている人気作家・雫井脩介さん。直木賞候補にもなったサスペンス『クロコダイル・ティアーズ』の文庫化を記念して、「この夏読みたい『雫井作品』6選」を、各出版社の担当編集者のコメントとともにご紹介します。映像化された作品も多いので、小説と映像作品どちらも楽しめること間違いなし!
(1)検察や警察の闇に挑んだ予言的な1冊
「人が人を裁くことはできるのか」「二人の検事が信じる正義とは何か」を描いた『検察側の罪人』。映画版では、現在注目を集めている映画『8番出口』(8月29日公開)で、出口を求めて“迷う男”を演じた二宮和也さんと、「大先輩」である木村拓哉さんが共演し、話題になりました。本書の魅力を担当編集者はこう語ります。
「正義を貫くためなら何をしてもいいのか――。重たい問いに真正面から挑んだ検察ミステリーです。昨今、検察や警察の恣意的な捜査にようやく目が向けられるようになってきましたが、12年前に書かれた本書は、歪んだ正義の『その先』を予言的に描きだしています。木村拓哉さん、二宮和也さん共演で映画化された傑作です」(文藝春秋 石井一成)

(2)これぞ雫井作品という心理サスペンス
堤幸彦監督と堤真一さんの初タッグで映画化された『望み』。ある日突然、家から姿を消した息子は、殺人事件の「被害者」なのか、それとも「加害者」なのか。揺れ動く父母の思いを描いた本作は、著者ならではの一級のサスペンスに仕上がっています。担当編集者に魅力を聞きました。
「行方不明の息子は殺人事件の犯人か、被害者か。家族はどちらを望めばいい? 究極の二択に手に汗握るのはもちろん、克明に描き出される家族の本音にはっとさせられる、これぞ雫井作品という心理サスペンスです」(KADOKAWA 吉田真理)

2025.08.22(金)
文=「文春文庫」編集部