人気作家・雫井脩介さんの小説を、堤真一さん・石田ゆり子さん・岡田健史さん・清原果耶さんら豪華キャストの共演で映画化した『望み』が、2020年10月9日(金)に劇場公開を迎えた。
建築家の石川一登(堤真一)と妻・貴代美(石田ゆり子)、高校生の息子・規士(岡田健史)、中学生の娘・雅(清原果耶)は、郊外の高級住宅で平和に暮らしていた。
しかしある日、けがでサッカー部を辞めて以来、無断外泊が続いていた規士が失踪。時を同じくして、規士の同級生が殺害される事件が発生。
さらに、もう1人が殺されたというニュースが入る。愛する息子は、殺人犯か、被害者か――。真実が明かされないまま、一登たちは疲労困憊していく。
演技達者な面々とともに、重厚なテーマと向き合ったのは、『人魚の眠る家』や『悼む人』など、骨太な作品も多く手掛ける堤幸彦監督。 今回は堤監督にインタビューを行い、舞台裏についてじっくりと伺った。
“気持ち”を表情に乗せるため 俳優を追い込んでいきたかった
――堤監督は『人魚の眠る家』や『天空の蜂』で東野圭吾さん作品、『悼む人』で天童荒太さん作品など、ベストセラー作家の原作に取り組むことも多いですよね。今回の『望み』も、『犯人に告ぐ』や『検察側の罪人』の雫井脩介さんの作品です。
最初にお話をいただいて、雫井さんのお名前をお聞きしたとき、チャレンジはしたいけど果たして僕で平気なのか? とは思ったんです(笑)。
先生の作品は警察モノや裁判モノなど、とにかく緻密な取材を行われたうえで書かれているから、自分が太刀打ちできるのか不安だった。
ただ、『望み』の原作を読んだときに、「これは家族の話だ。やらなければならない」という強い使命感に駆られたんです。
僕はいま64歳で、あと何年生きていられるかわかりませんが、自信があるとかないとかではなく「この作品をやらなければ次にいけない」と感じ、自分から「やらせてください!」と手を挙げました。
――どういった部分に、とくに惹かれたのでしょう?
息子が不在になって、犯人なのか被害者なのかわからない――という状況に陥った家族の“感情”が、父母の気持ちのあり方を中心としてしっかり描かれているところですね。
原作で描かれている“気持ち”を、きちんと役者の表情に乗せることができれば、強い作品になると確信できたんです。
そのためには俳優を追い込んでいきたかったので、今回は物語の頭から順番に撮影する“順撮り”をやらせてもらいました。
たとえば通常はリビングのシーンはまとめて撮っちゃって……といったような作り方をするので、順撮り方式は全く効率的じゃないんですよ。
経済的にも大変なのでプロデューサーには迷惑をかけましたが、役者それぞれが順を追って気持ちを作ることができたので、とても良かったと思っています。
2020.10.13(火)
文=SYO
撮影=鈴木七絵
スタイリング=関恵美子