「あなたならぴったりだわ」
よく引用される逸話は、ヨーコに予想外の新しい業務を突然持ちかけられてパンが絶句する、というものである。
「午前9時半にヨーコが私のところに来て、『メイ、話があるんだけど。ジョンとうまくいっていないの』と言うの。2人の間はピリピリしてたから、それはわかってた」とパンは言う。
「『今後ジョンはほかの人たちと付き合い始めるから。あなたボーイフレンドいないじゃない、それで、彼にいいんじゃないかと思って』と言われた。私はそんなことないと思うと言ったけど、『彼のことひどい扱いをするような人と付き合ってほしくはないでしょ?』と言うの。それで、『もちろん』と答えた。すると彼女が『あなたならぴったりだわ』と言って立ち去ったの」

ヨーコは、「メイ・パンはとても知的で魅力的な女性で、非常に有能だった。2人なら大丈夫だと思った」と語っている。
ジョンの情事はヨーコがフェミニストのカンファレンスでシカゴに1週間出張した際に始まったと報じられている。始まったのがいつであれヨーコは2人が交際を始めたことを喜んだ。

ジョンの機嫌の悪さと酒癖とジェリー・ルービン邸での裏切り行為のほかにも、ヨーコはジョンの妻であるということが意味するものに苦しんでいた。「毎日、人々から憎しみを向けられるのがどういうことか想像つく? そんな状況、逃げ出したくなるでしょ」と言っている。
さらに、「どこに行っても誰もがジョンと話したがった。彼女は文字通り脇に追いやられていた」とグルーエンは述懐する。
当初、アート界隈の彼女の友人たちはセレブのジョンなど気にしないという態度だったが、ご多聞に漏れず彼らも魅了された。誰もがジョンを求めていた。
2025.07.20(日)
文=デヴィッド・シェフ
訳=岩木貴子