個性豊かなジオヒルズワイナリーのワイン

 そして、あまりの楽しさに時間を忘れ、気づけば外は真っ暗。あっという間に数時間が経過し、店を出る時には「あーおいしかったー、楽しかったー」と思わず口に出してしまうような唯一無二の体験ができる。そんな場所が「song」なのです。

 料理は地元である小諸市や御牧ヶ原を中心に、信州各地で採れた旬の食材を使用。その一部はシェフが自ら野山に足を運び、採取したものです。それらの素材を薪火でじっくりと調理する。原始的な手法だからこそ、素材本来の旨みを素直に引き出し、ココロとカラダが本能で喜ぶ絶品料理が完成します。

まさに大地の恵な料理たち

 日々、手に入る食材が変わるため、メニューはそれに合わせて構成するのが「song」流です。発酵や保存など地域に根差した食文化と大地の恵みを表現しながら、一皿ごとに土地の記憶や自然とのつながりを感じられるような、豪快にして繊細な料理が次々と登場します。

 醸造家の家に招かれたような体験ができるレストランだからこそ、料理人とゲストとの距離感が物理的にも心理的にも近く、それが「song」の魅力になっています。

 シェフのみなさんは、ゲストのテーブルの隣で料理を作り、仕上げていきます。ゲストは座ってワインを飲みながら料理を待つのも良し、調理中のおいしそうな香りにたまらず席を立ち、薪の炎で食材を焼いたり炙ったりする様子を眺めたり、シェフたちと素材や調理法などについて話したりするのも良し。友人知人の家に招かれた時のように、自由にふるまうことができるのです。

火加減を適時調整しながらパエリア作り

 さまざまな意味で距離感が近いからこそ、「song」ではゲスト同士はもちろん、個性豊かなシェフたちとのコミュニケーションも食事の場を盛り上げる大切な要素になっています。

 料理長を務めるのは、人懐っこい笑顔が魅力の田村周平さんです。長野県茅野市生まれで、幼少期に母とオムレツを作った際に思うように作ることができず、「もっと上手に作りたい」と強く感じた瞬間から、料理に興味を持ち始めたそう。

 東京都内のレストランのみならず、キャンプ場のリゾートやスペインのサン・セバスチャン、オーストラリアのメルボルンなど海外のレストランでも経験を重ねてきた田村さん。より洗練されたメニューを提供するシェフを目指して「song」の料理長に就任しました。

 「song」について「御牧ヶ原を中心にまだ知られていない食材や生産者さんの素材と、既に知名度のある生産者さんの素材を合わせてコースを組むことで、この地域の魅力を満遍なく伝えられるようにしたい」と田村さんは話します。

2025.08.17(日)
文・写真=石川博也