魚の棚商店街おすすめのおみやげ

瀬戸内海の穏やかな表情、それも静かな朝の光景は何度見てもいい。しばらくたたずみ、どんどん変わる朝焼けの色と消えゆく船を眺めていた。うーーん……やっぱり人間は海とか山とか、あるいは巨石や巨木でもいいんだけど、「ものすごく大きなもの」に定期的に接しないとダメだな、と思う。自然の壮大なものを前にすることで、何か畏怖するような気持ちを思い出す大切さ。都市部にいると忘れてしまう感覚って、確かにある。
それはともかく、しっかり散歩もしてお腹を減らしつつ、二泊三日の明石・食旅を堪能した。駆け足でおみやげについての情報も書いておきたい。私のおすすめは魚の棚商店街にある「魚秀」さんの、魚の味噌漬け。すずきのかま、さわらの味噌漬けが特におすすめ。そして商店街すぐそば「こうじや京作」さんの味噌もまろやかで実にいい。私は味噌を買ってから「魚秀」さんに向かい、一緒に送ってもらっている。
旅を終えたら食べたくなる“自作エナジードリンク”

さて、旅を終えたら食べたくなるのが「自分の味噌汁」である。濃いめにひいた出汁は、私にとって何よりのエナジードリンク。疲れた胃や肝臓をかかえた体に沁み入ること、この上ない。
冷蔵庫あるものとにかく次々と入れて、具だくさんの味噌汁を作る。旅はどんなに気をつけていても、栄養もかたよりがちなら、食物繊維も足りなくなりがち。今回は春菊、トマト、三つ葉と野菜たっぷり、きのこに厚揚げも入れる。いわば栄養の「帳尻合わせ汁」だ。
味噌とトマトって最高に相性がいいの、ご存じだろうか。トマトの酸味×味噌のうま味はおいしさの相乗効果、これからの蒸し暑い季節にはぴったりの風味となるので、ぜひ試してほしい。味噌汁には豆腐が定番だけど、厚揚げはコクも出るし、満足感もアップ。私は包丁で切らず、手で食べやすい大きさに崩して加えている。こうすると味の染みもいいんだ。
2日ほどゆっくり泊まって息抜きして、帰宅したら自分の味噌汁にいやされる。忙しくて乱れてた生活ペースも、帳尻が合った感じ。我が味噌汁を味わいつつ、「たなか屋」さんのシメ的な一品「いろんな魚のあらの味噌汁」には今回も行きつけなかったなあ……と悔しがる私もいるが、次の旅の目的ができたと思えば、まあそれでいいか。

Column
白央篤司の帳尻あわせ食日記
外食が続いて栄養バランスが乱れてしまった、冷蔵庫の余り食材や消費期限が迫る調味料の使い方がわからない…体や台所をすっきりさせる“食の帳尻あわせ”のヒントを、フードライター・白央篤司さんが日々の食体験とともに綴ります。
2025.06.20(金)
文・撮影=白央篤司