第二子出産を経て、石原さとみさんが舞台『リア王』に臨みます。シェイクスピアの悲劇に向き合いながら、彼女が惹かれたのは、「悪役」という言葉だけでは捉えきれない人間の複雑さでした。長女・ゴネリルという役をどう受け止め、どう演じようとしているのか。本作に挑む理由と、いまの率直な思いを聞きました。
人は誰しも愛されたいという感情を持っている
――シェイクスピアの四大悲劇のひとつとして、世界中で上演され続けてきた『リア王』という物語について、まずどんな印象を持ちましたか?
軽く受け取られたくはないのですが、素直に「面白い」と感じました。家族愛や権力、孤独といったテーマは、現代を生きる私たちにも強く響きますし、ただ悲劇的なだけでなく、切なさがある作品ですよね。年老いていく権力者の弱さに、親子関係が複雑に絡み合っていく構図はとても興味深いです。
愛してほしい老人であるリア王と、同じように愛を求める娘たち。それぞれが自分なりの「正義」と強いエネルギーを抱えているからこそ、あれほどの悲劇へと転がっていくのだと思います。何百年ものあいだ読み継がれ、上演され続けている。その事実だけでも、シェイクスピアの凄みを感じます。
――生と死、権力と政治。親と子の問題など、さまざまなテーマが描かれていますが、その中でも特に心を惹かれたのはどんな点でしたか?
時代や人種を問わず、人は誰しも「愛されたい」という気持ちを持っている。けれど、愛しているのにそれが相手にうまく伝わらないと、どうしても歪みが生まれてしまう。愛はとても普遍的でありながら、同時に厄介な感情なのだと感じました。
自分の思いをわかってほしいがために、言わなくてもいいことを口にしてしまったり、逆に本当に大切な言葉が足りなかったりする。『リア王』の登場人物たちは、そうした言葉の過不足によって、少しずつ、でも確実にすれ違っていく。その過程が、とても人間的で、強く胸に残ります。
