この記事の連載
ラジオでの相談回答数はなんと2000件超え。今やすっかり人生相談の名手となっているジェーン・スーさんと、もはや相棒といえる存在の堀井美香さん。
ふたりの軽快なクロストークは幅広い層に人気で、Podcast番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」では、ふたりが本音を交えて繰り出す、ユーモアと深みのある回答がリスナー(通称「互助会員」)を魅了している。
ふたりが読者のお悩みに答えます!
【相談】会社員としての適性のなさに落ち込む

【お悩み】
私は30歳の時にこの会社で定年まで働こう! と強い思いを胸に入社しました。順調とは言えませんが私なりに努力をし、今は数店舗のマネジメントをするマネージャーをしています。私の悩みは言いたいことがうまく言えないことです。意見を求められると、言語化が苦手なのでうまく説明できず、モゴモゴしてしまいます。意見をはっきり言う人が評価される会社で、私はそういう人たちを見ると、なぜそんな言い方をするんだろうなと不快に思うタイプなのですが、それが会社員としては正解なんだと思うと自分の適性のなさに落ち込みます。
(51歳・女性・Y・Kさん)
スー 頑張りが給与や査定に反映されないということであれば問題だけど、「すごいね」「いいね」といった、周りからの承認が得られないことに対する悩みであれば、気にすることはないです。それに社内のみんなから認められることに価値を置きすぎると、気づかないうちに「やりがい搾取」のような状況に陥ってしまう可能性もあるからね。
相談者さんは「意見をはっきり言う人が評価される」と書かれていますが、もし自分がそうしたくないのであれば、無理に合わせる必要はありません。「さすが〇〇さん、いつも良い意見だね! 参考にさせてもらうよ!」と、積極的に意見を言う人たちを持ち上げる側に回るのも一つの方法です。そのほうが働きやすくなると思うな。
堀井 大丈夫、社内では評価されているはずだよね。現にマネージャーをまかされているんだから。
スー 私が会社員時代にもっと早く知りたかったのは、「会社は親ではない」ということ。どこかで会社は親のように誠実に自分と向き合ってくれて、自分のことを大切に思って気にかけてくれて、誠心誠意、自分を正当に評価してくれるものだ、と無意識のうちに思い込んでいたから、会社に対して不満を感じることも多かったけど、会社はそもそもそういう場所ではなかったんですよね。
基本的には、会社を家族のように全面的に信頼するのはやめたほうがいい、ということは伝えたいです。会社との関係性に対する「設定」を変えてみれば、今の悩みが悩みではなくなるはずです。こういう話をすると、「なんで労働者のくせに経営者目線で話すんだ!」と言う人もいるけど、山に登るなら、地図を持って行くのが当然なのと同じで、会社で働くなら、そこがどういう場所なのかを理解しておくのは大切なことなんです。
堀井 どの会社にもゴリゴリ言うタイプ、声の大きい人は必ずいますが、その人が評価されて出世しているというわけでもない。相談者さんは、自分が持っていない部分に憧れているだけなんじゃないかな。もし相談者さんが、主張する側ではなく、主張した人の考えを補強したり、軌道修正したりするタイプならば、それが自分の役割だと受け止めて、今のやり方のままでいいと思います。どうすれば会社全体が円滑に回るかという視点で考えるほうが、建設的だと思いますし。
最近は、個々の社員が持つ能力を細かく分析して、コツコツと仕事を進める人と瞬発力がある人など、組み合わせの妙でチームを作る会社もありまよね。どの特性が一番秀でているということはないし「会社員としての正解」は一つではないと私も会社員時代に実感しました。あと、アナウンサーとして一つ言うと(笑)、口周りの運動をするのが良いかと思います。気持ちの面があるとしても、物理的に口の動きを鍛えてぜひモゴモゴの解消を。
スー もちろん言いたいことをすぐに言葉にできれば、スムーズに進むこともたくさんあるでしょう。だけど、51歳という年齢で、仕事上の苦手な部分を克服しようと無理をする必要はあまりないと私は思うな。それよりも、自分が「できること」「得意なこと」をさらに伸ばしていくことに力を注いでほしいですね。
スー 私たちふたりも、全然違うタイプなんですよ。私がこだわるところは美香ちゃんが黙っていてくれるし、美香ちゃんがやりたいことは私は別にどっちでもいいから「じゃあやろう」ってなる。そこで私が「美香ちゃんみたいにアイデアが出ないから落ち込む」とはならないよ。そこはおまかせ。
堀井 みんなで運動会がしたい、第九が歌いたい、とかね(笑)。
スー 「また始まったな!」とは思いますけど(笑)、でもそれを一生懸命やると、互助会員のみなさんが喜んでくれるという経験値があるから「じゃあ、やろうよ」ってなる。あまりにも暴走したら、止めますけど(笑)。私は、企画のテーマを決めたり、「これは絶対にダメ」というラインを設定したり、もっと手前の段階の担当って感じ。そこに対しては美香ちゃんは……。
堀井 「スーちゃんにまかせた!」ってなってますね(笑)。
スー みなさん、自分の得意なことをやったほうがいいんですよ、この年齢になったら特に!
堀井 いろんなタイプがいたほうが、組織全体としても強くなりますからね。
» 『OVER THE SUNのお悩み相談室』まとめページを見る
ジェーン・スー
1973年、東京都生まれ。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、Podcast番組「となりの雑談」パーソナリティとして活躍。近著に『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)、『へこたれてなんかいられない』(中央公論新社)などがある。
堀井美香(ほりい・みか)
1972年、秋田県生まれ。2022年3月にTBSを退社しフリーランスに。様々な番組・CMでナレーションを担当する一方、自ら朗読会を主催するなど、多方面で活躍する。初主演を務める舞台『フェードラ―炎の中で―』が6月26日より東京・水戸で上演予定。
Podcast「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」

毎週金曜日の夕方5時に配信。TBSラジオが制作するPodcast番組。飾らないトークで女性たちの支持を集め、月間リスナー約80万人の人気番組に。2025年3月には日本武道館でイベントを開催し、約8000人を動員した。
衣装クレジット
ジェーン・スー ジャンプスーツ 99,000円/シンヤコズカ(ザ・ウォール ショールーム) シューズ 64,900円/ビィウィッチ ピアス/スタイリスト私物
堀井美香 ドレス 29,700円/ヌキテパ(パサンド バイ ヌキテパ) ネックレス 23,100円/フミエ タナカ(ジャーナル スタンダード レサージュ 丸の内店) シューズ 25,300円/オデット エ オディール(オデット エ オディール 新宿店)
オデット エ オディール 新宿店
電話番号 050-8893-4165
ザ・ウォール ショールーム
電話番号 050-3802-5577
ジャーナル スタンダード レサージュ 丸の内店
電話番号 03-5860-3215
パサンド バイ ヌキテパ
電話番号 03-6427-9945
ビィウィッチ
電話番号 03-5726-9750
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2025.08.15(金)
文=綿貫大介
写真=尾身沙紀(io)
スタイリング:佐藤里沙(BE NATURAL)
ヘアメイク=藤原リカ(スーさん/Three PEACE)、yumi(堀井さん/Three PEACE)
CREA 2025年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。