「女だから評価されている」という雰囲気にモヤモヤ
――過去のインタビューを拝読すると、『女が嫌いな女たち』の企画を出す以前、前川さんは「女性ならではのアイディアを」と求められたり、「女性らしい企画だね」といった反応をされたりするのを避けたいと感じていたそうですね。なぜそう感じていらしたんですか?
当時の自分がそういうふうに捉えていたかはわかりませんが、今思えば多分、やっぱり「女だから評価されている」みたいな雰囲気がそこにあったからなんじゃないかなと思います。“私”の企画が本当に評価されているというよりは、あくまで“女性である私”の企画だから評価されているようにどうしても感じられてしまって、それがモヤモヤしたんじゃないかなと。
――その違和感はわかります。出版業界やウェブメディアでも、ジャンルによってはそういうことがあって。作り手の男女バランスが偏っていると、「少数派として女性の意見を言ってくれ」と期待される場面が出てくるんですよね。
そうですよね。“代表”みたいな感じにどうしてもなってしまう。代表しなくてもいいようなバランスになってくれたらいいんですけどね、本当に。
――出演者が女性中心で視聴者も女性が多いであろう2番組を続けてきて、「女性ならでは」と捉えられることに対する受け止め方は何か変わりましたか?
昔ほどは、アレルギー的な感覚はなくなったかもしれないですね。どちらの番組も、ただ自分がやりたいことをやっているだけなんですが、それが結果的に女性の視聴者の方から共感をいただいているのは非常に嬉しいです。
バラエティの歴史の中ではこれまでも女性向けの番組がいろいろあったけど、「女の子が集まって恋愛の赤裸々トークをする」みたいなものが結構多かった気がするんですよ。でもうちの番組はあんまり恋愛の話題はやってなくて。世の女子のみなさんも、そんなもんだと思うんですよね。
うちの番組はスタッフも女性が多いですし、私自身も女性として作っているので、男性視点を通していない女性の番組というところで共感を得られているのかなと思います。
――別に誰もが恋愛の話ばかりしてるわけじゃないですもんね。視聴者からはどんな反応が届いていますか?
ひとつ、すごく嬉しかったことがあって。子宮頸がんワクチンについて取り上げた回の放送後、視聴者の方から「放送をきっかけに、検診をやっていないことに気付いて病院に行ったら子宮頸がんが見つかり、早めに治療ができました。ありがとうございます」ってご連絡をいただいたんです。「明確に誰かの役に立ったんだな」と感じましたね。
――それは嬉しいですね。
逆に、反省したこともあって。摂食障害について取り上げた回では、摂食障害経験のあるタレントさんに経験談を話してもらったんですけど、ご覧になった当事者の方から「『こんなに怖いものなんだ』って言われても、すでに摂食障害になっている人間からしたら今更なんの救いもない」という反響があったんですね。
たしかにそうだな、と思いました。「こんなに怖いんですよ」という啓蒙にはなったかもしれないけど、当事者目線が入っていなかった。それだと、あくまでもコンテンツとして消費しただけに留まってしまっているんですよね。
すごく反省して、以来「当事者にとって何か救いがあるか」「感じ取ってもらえるメッセージがあるか」あるいは「共感で救われる部分があるか」というところをより深く考えるようになりました。30分の尺の中にそういうものを何かしら入れたいな、と。
――啓蒙は啓蒙でもちろん大事ですが、「議論が深まりましたね」で終わってしまっていないか? というのは出版やウェブメディアで仕事をしていても考えるところです。
そうなんですよね。以前に「メディアって問題提起するだけだよね」と言われたこともあって、そのときも「たしかにな」と思いました。そこから先で何ができるかというところまで考えないと、本来はダメなんですよね。
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- 文=斎藤 岬
写真=平松市聖
