ほぼ独学のまま、完成させた具象絵画

《地中海の猫》 1949年 個人蔵
《朱色の机と日本の女》 1967-1976年 Collection of Mr.Brent R.Harris (C) Christie’s Images Limited 2014

 やがて18歳の時に訪れたイタリアのアレッツォで、バルテュスは初期ルネサンスの画家、ピエロ・デッラ・フランチェスカに惹かれ、長い時間をかけて模写を行い、その幾何学的な構図やテンペラによる厚みのあるマティエールを学び取っている。さらに17世紀古典主義絵画を確立したニコラ・プッサン、「見たものしか描かない」とうそぶいた19世紀写実主義の主唱者であるギュスターヴ・クールベなどへの傾倒を経て、バルテュスはほぼ独学のまま、絵画史のトレンドから離れた場所で具象絵画を完成させていくのである。

《樹のある大きな風景(シャシーの農家の中庭)》 1960年 ポンピドゥー・センター (C) Centre Pompidou, MNAM-CCI, Dist. RMN-Grand Palais / Bertrand Prévost / distributed by AMF
《トランプ遊びをする人々》 1966-1973年 ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館 (C) Museum Boijmans Van Beuningen, Rotterdam Photo: Studio Tromp, Rotterdam

<次のページ> 絵画に逸話は必要ない

2014.05.24(土)
文=橋本麻里