この記事の連載

 創刊35周年を迎えたCREA。その創刊から寄稿してきた齋藤 薫さんが美容の35年を振り返る。今日の常識が明日の非常識ともなるなか、自分の美容を選び取るために必要な姿勢とは。(前後篇の前篇後篇を読む


35年の劇的変化に見る、美容の常識、嘘ホント

 “失われた30年”とは裏腹に、この30~35年、日本の美容は劇的な発展を見た。特にミレニアム以降の変化は目覚ましく、大袈裟ではなく“人類として進化した”と言ってもいいほど、日本人は年齢より若く、そして美しくもなっている。

 その真偽は別として、人間は潜在能力の90%以上を眠らせていると言われるが、この35年で眠っていた能力の2割位が目を覚ましたのではないかと思われるほど。明らかに美容の進化と、美容界の賑わいの成果である。

 もちろんそこには化粧品の目覚ましい進化も深く関わっているが、最も大きな起爆剤となったのは、やはり“プチ整形の台頭”だろう。いや、みんながそれに飛びついたという話ではない。実際体験しなくても、そういう手段が生まれ、そういう選択肢があると知るだけで、何らかのスイッチが入るのが人間。イザとなればそれがある、そう考えただけで、心身のポテンシャルが上がるのが人間なのだ。

 ただ、そうした局面で冷静な判断力を持つことも、賢い美容のうち。美容にはまだ解明されていないこともあれば、常識の嘘もある。だから情報に飛びつくのではなく、考える。そして自分で判断し、自分で正解を選ぶ。少なくともCREAはそういう美容を標榜してきた。だから、ちゃんと個性が磨かれ、人とは違う魅力が醸成されてきたはず。それはどんな変化が訪れてもブレない鍵。

 知っているけど、考える……そのためのヒントとなりうる美容の変化と逆転、常識の嘘ホントを、ここで35年分振り返る。美容はなぜ変わり続け、正解がいくつもあるのか、きっと見えてくるはずだから。

#1  35年前、30代はもう中年、それどころか「オバサン」呼ばわりされていた

 この35年に最も激しく変化したのは、“年齢感”だろう。令和の今、見た目も気持ちも今の人は×0.7、7掛けの年齢を生きている。つまり30歳ならば×0.7=21歳。

 でも、35年前の30代は完全に中年。今の30代は信じないどころか、ありえないと怒るのだろうが、世の中にオバサン扱いされていた。いいとこ熟女。「いい年をして」と言われる年齢だったのだ。

 それが一変するきっかけは、松田聖子が30代でも“ぶりぶり”であったこと。また40代の黒木 瞳が年下の男にモテモテの美女をドラマで演じ、ファッションアイコンともなったこと。

 それが気がつけば少しも不自然ではないことに世間が気づき、年齢感は一気に若返っていった。生身の人間の影響力はあまりにも大きいのだ。

ヘンケル コンシューマーブランド

電話番号 03-5783-4271

2025.02.28(金)
文=齋藤 薫(美容ジャーナリスト)
写真=平松市聖

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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