CREA Traveller 2026 春号は「アート旅」特集。花や鳥、海岸線――。自然を愛し、光を追い続けた画家クロード・モネ没後100年の節目に、“モネのまなざし”を求めて彼が過ごしたフランス・ノルマンディ地方を巡る。そしてフランスと日本のアートスポットを訪ね歩き、芸術に導かれる感性の旅路へ。

CREA Traveller 2026 春号
モネの愛した光を辿る
特別定価 1,800円
ル・アーヴルは第二次大戦の戦火による多大な破壊を被った、フランス屈指の商業港の街。復興様式による街並みは独特だが、印象派の揺りかごならではの鋭い美意識は、健在だ。
モネの目覚めの時代、ル・アーヴル
ル・アーヴルの街は中世に存在せず、その歴史はルネサンス期から始まる。
シャンボール城を築いたフランソワ1世の時代、土木技術の進歩が湿地に港を開いた。当初は海軍の拠点で、オンフルールに替わってセーヌ河口の守りを固める要塞の意味合いが強かった。モネの時代はル・アーヴルがナポレオン戦争や革命を経て、近代的な商業港に変化しつつあった時代だ。
印象派の原点といわれる《印象、日の出》が描かれた当時の「大河岸」こと現在の「サウサンプトン河岸」は、名前も護岸の形も変わっていて、日中に訪れても昔の面影を一切留めない。だが冬の朝日が昇る一瞬なら、逆光に浮かび上がるクレーンや煙突のシルエット、水面の反射に、思わず息をのむ。
さらに右岸の砂浜をつたってモネの叔母の家があった隣町、サンタドレスの丘に登ってみよう。高みから目の前の海を行き来する船に、10代の瑞々しい感性が胸を弾ませたのだろう。
モネの時代、富裕層にとってル・アーヴルは働く町で、サンタドレスは週末を過ごす町だった。だから砂浜から丘を見上げる絵には、漁師に交じって浜辺でくつろぐ観光客が描かれていた。それが新しい風俗、生活様式だった。
この辺りはドーヴィルやトゥールヴィルに伍してリゾート開発する計画もあったが、日の目を見なかったのが奏功し、今は隠れ家的なカフェやレストランが少なくない。
ル・アーヴルは今日もほどよくエキゾチックなままだ。
アンドレ・マルロー近代美術館(Musée d’art moderne André Malraux)
印象派の珠玉の傑作
オルセーやルーアンと並び、印象派の最重要コレクションと目されるのがル・アーヴルの美術館だ。モネの《睡蓮》をはじめマネら同世代に加え、デュフィなど後の世代でも卓越した作品が幅広く展示されている。
所在地 2 boulevard Clemenceau Le Havre
電話番号 02 35 19 62 62
営業時間 11時~18時(土・日曜、~19時)
定休日 1/1、4/6、5/1、5/25、11/11、12/2
料金 7ユーロ
https://muma-lehavre.fr/
CREA Traveller 2026年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
