この記事の連載
日本コスメ #1
日本コスメ #2
海外コスメが続々日本へ上陸するということは、すなわち逆も同じ。海外ではいま、日本の美容が J-Beauty として注目を浴びているのだ。みるみる切り拓かれる新しい美容の地平から、目が離せない。(前後篇の前篇/後篇を読む)
#1 「美しくなるためじゃない」と言い切る勇気を賞賛したい黒KANEBO

多様性への急速な流れも手伝って、アンチルッキズムがたちまち定着する中、偶然か必然か、新生デビューを遂げたカネボウが、息を呑むような衝撃的なメッセージを掲げた。
「私たちは化粧品を作っているのではない、希望を作っているのだ」「美よりも、希望を与えたい!」化粧品会社としては明らかにリスキーな提案、にもかかわらずそれを目にした時、予期せぬチカラと喜びが湧いてきたと言う人が少なくなかった。化粧品会社が、ましてやメジャーブランドがそう言ってくれることにまさに希望をもらえた形。
黒い容器になったことから「黒KANEBO」との愛称も生まれ、絶大な支持を獲得することになる。もちろん商品自体が優れたものでなければ、言葉だけが浮いてしまったはず。しかしユニークな洗顔料で注目を浴び、笑顔になれるシートマスクで新風を吹き込み、素肌になりすますファンデを大ヒットさせ、そして今春発売の口紅でついに史上No1ヒットを記録、ベスコス総なめという快挙まで成し遂げた。

「美ではなく、希望を」そう言い切れたのも、製品に対する絶対の自信があったからこそ。そして時代のニーズを見事に読み取り、性別を超えて人々の意識の変化に無理なく寄り添ったことが、稀有な成功をもたらしたのだ。
そもそも日本の化粧品が全く新しい、でも本質を突く化粧品の役割を独自のメッセージとして訴え、予想を超えるほどの共感を得たこと、美容大国にありながら美を越える価値を提案できたこと、それは日本人にとってこの上なく誇らしい。この勇敢で魅惑的なブランドに、私たち、付いていきたい。
カネボウインターナショナルDiv.
フリーダイヤル 0120-518-520
2024.11.01(金)
文=齋藤 薫(美容ジャーナリスト)
写真=平松市聖
CREA 2024年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。