世はBLドラマ量産時代。1クールに1本は必ずあり、カップリングのバリエーションが豊かになり、恋愛以外の要素を掛け算する作品も増え、最近では若手俳優・アイドルの登竜門的な機能を果たしている節まであります。

 それは喜ばしいことである一方、制作すればある程度の人気を約束されたジャンルとなり、「とりあえずBLやっとけばいい」と思われているからか、正直粗悪な作品が増えているのも事実。中には、視聴者の目を軽んじているのではと勘繰ってしまうようなものも。

 そんななか、本日最終回が放送される「未成年~未熟な俺たちは不器用に進行中~」(読売テレビ 月曜深夜1:33~)、かなりよかったです! もっと話題になっていい! という思いで書きます。本作は韓国の電子コミックで全世界で643万View超えを記録する同名人気BL作品を日本で映像化した作品。まずストーリーが秀逸です。

ヤンキーと優等生、「共通点」に惹かれ合う

 他人に無関心な優等生・水無瀬仁(本島純政)は、クラスの問題児・蛭川晴喜(上村謙信/ONE N' ONLY)と関わらないように学生生活を送っていたものの、ある日、父親に殴られて傷だらけの蛭川の姿を目撃。思いがけず蛭川の秘密を知ってしまった水無瀬は、これ以上深く関わらないように距離を置こうとするものの、学校にいるときとは別人だった蛭川の姿が脳裏から離れず……。関わるはずのなかった二人は少しずつ距離を縮めていきます。

 裕福な家庭に生まれたお坊ちゃんと、暴力的な父親と二人で暮らすヤンキー。家庭環境も性格もまったく違う二人が惹かれ合う、古典的なラブストーリーの定石に沿った安定感はさることながら、その解像度がすごいです。

 水無瀬は両親がうまくいっていないこともあり、基本家でも一人で生活し、寂しさを常に抱えているけれども、感情を表に出さないことで自分自身をなんとか保っている。そして蛭川の両親は離婚し、蜷川はともに暮らす父親から虐待を受けている。ともに未成年で両親の庇護のもとにいるから、どうしようもない。特に身体的虐待はつらいシーンだし、本来なら福祉の出番なのだけど、うまく対処できない幼さ、未熟さもわかる。「未熟な俺たち」というサブタイトルがここにも活きています。

 そして本作では見本になるような立派な大人が描かれないというのも特徴です。それはそれぞれの両親や先生の描写をみてもそう。本当はちょっとはいい部分はあるのかもしれないけれど、未成年の二人からみた大人たちってこうなんだろうな、と思わされる。大人って自己中で、自己保身に走っていて、子どものことなんか考えていない。周囲の大人たちの善の部分はあまり映りません。

 本当は幸せなことだってあったはずなのに、自分だけがつらく、自分だけが孤独で、居場所がない。未来には期待できない。この気持ち、当時10代だったすべての人が理解できるのではないでしょうか。

2025.01.06(月)
文=綿貫大介
画像=読売テレビ