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すごい迫力なのに笑えるダンスシーン

――監督には、どのようなご提案をされたのですか?

岩田 おおまかに「動」と「静」、あとはフラットにやるというバリエーションパターンです。僕の提案に対して監督からNGが出ても、すぐにリカバリーできるように、いくつかパターンを考えていきました。

 そうしたら、最初に演じた「動」パターンをすごく気に入ってもらえて。その上、どうせカットされるだろうからと開き直って演じていたら(笑)、「もっと長くやってよ」と言っていただけたので、本当に長々やらせていただきました。

 完成した映画を見たら、自分が思っていた以上に長く使っていただけていましたね。尺を取ってしまってすみません、という感じです(笑)。

――軽快でキレのあるダンスシーンは、すごい迫力なのに笑えるという、新たな岩田さんの一面がまた開花したように感じました。

岩田 ダンスとして魅せるために踊ったというよりは、「どうやったら福田監督に笑ってもらえるか」を考えただけなんです。撮影中、「何をやったら福田監督が笑うか」「どうしたら面白いと言ってもらえるか」と、そればかりを考えていたら、結果的に、身体を使って表現することで笑いを生み出した、という形になりました。あらためて「笑い」の難しさを実感しています。

 お笑いってごまかしがきかないんですよ。もちろん、僕が普段メインでやっているダンスパフォーマンスや歌もごまかしがきくものではありませんが、「笑い」はさらに細かいところまで観ている人に伝わってしまうので、毎回すごく神経を使って演技をしていました。

――監督からのリクエストが多くなったり、難しくなったりもされたのですか?

岩田 今作に関しては、僕はほとんど監督からの演出を受けていないんです。だから自分で勝手に「ミカエルの山場はここだ」と決めて、自由にやっていました。

 正直、初めの頃はそれでいいのか少し不安なところもありましたが、僕が考えたミカエルを演じて監督が笑ってくださっていたので、いろいろ用意していった甲斐があったな、と思っています。

2024.12.19(木)
文=相澤洋美
写真=平松市聖