ソファに横たわって、天井を見上げるのが好き
――繊細でアーティスト気質な印象のテレンスさんですが、『男たちの挽歌』や『欲望の街/古惑仔』シリーズに登場するようなワイルドな男性像に憧れたことは?
もちろん、幼いときは家族と一緒に、そういった香港のアクション映画ばかり観ていましたし、どこかで憧れのようなものありました。でも、年齢を重ねていくうちに、メイベル・チャン監督の『誰かがあなたを愛してる』やピーター・チャン監督の『ラヴソング』、ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』といったアート系の作品の方が好きになりました。そして、香港演藝學院に進学してからは日本や韓国、ヨーロッパのアート系作品を多く見るようになったんです。
――香港映画界において、歴代観客動員数第1位のメガヒットを記録した『~九龍城砦』ですが、この社会現象をどのように捉えていますか?
まさに、香港を代表する作品になったといえるでしょう。この映画の舞台となった九龍城砦は現存していませんが、この映画では、そこで貧しくとも強く逞しく生きていた住民の人情や絆が描かれており、外部からの攻撃により、それをどのように守っていくか?という話でもあります。それは過去の香港の姿であると同時に、今の香港の姿でもあり、世の中にとって普遍的なテーマではないか? と思っています。
――テレンスさん自身も、「全民老公(香港の国民的夫)」と呼ばれる存在になりました。
なりたくてもなれない存在だと思うので、そこまで言っていただけて、とても光栄です。とはいえ、僕自身かなり内気な性格なので、恥ずかしくもあります。オフの日は、できるだけ家に引きこもって、本を読んだり、映画を観たり、あとは疲れたときにはソファに横たわって、ずっと天井を見上げて、頭の中を空っぽにするのが大好きなんです(笑)。
2024.11.24(日)
文=くれい 響
写真=榎本麻美