“香港の伝説”レスリーを演じたプレッシャーとの戦い
――21年には、人気歌手アニタ・ムイの半生を描いた『アニタ』(ディレクターズ・カットがDISNEY+にて配信)が大ヒット。ここでは、実際にアニタの親友だったレスリー・チャン役を演じました。
『アニタ』の撮影は、『夢の向こうに』よりも前でした。このときもオーディションで選んでいただいたのですが、初めての映画出演で、しかも“香港の伝説”であるスーパースターのレスリーさんを演じるなんて、プレッシャーしかありませんでした。決まってから、ずっと緊張していましたし、どういう準備をしていいのかも分かりませんでした。
――24年公開の台湾映画『鯨が消えた入り江』(NETFLIXにて配信)も、レスリーと密接な関わりがある作品でしたね。
これも縁なのか、運命なのかもしれません。『アニタ』のときは、リョン・ロクマン監督から「単にモノマネをするだけではいけない」と言われていたのですが、「スーパースターになる前、アイドル時代のレスリーさんは、どんな私生活を送っていたのだろう?」と考えながら、演じていくうちに、少しずつプレッシャーから解放されていきました。
――これまでのキャリアを振り返ると、生徒の母親と不倫する教諭を演じた台湾映画『トラブル・ガール』(23年・「大阪アジアン映画祭」にて上映)を含め、どこか影のある役柄が多いようにも感じます。
僕自身は「これまで演じてきた役柄によって、どのようなパブリックイメージになっているのか?」といったことを、わざわざ考えたことはありません。ただ、役者として、同じようなイメージが定着してしまうことは、あまりいいことだと思いません。もちろん、仕方がないこともあるでしょう。でも、なるべく殻を破って、できるだけ自由に、柔軟性を持って、いろいろな役柄をやっていきたいと心掛けています。
2024.11.24(日)
文=くれい 響
写真=榎本麻美