この記事の連載

 こんにちは、美容研究家のにらさわあきこです。渋谷の人気漢方薬店「LAOSI」にお邪魔しています。

 前篇は、私の不調の原因と体質や選ぶべき食品について、店長で薬剤師の松浦尚子さんに教わりました。

 今回は同じく松浦さんに、漢方の考え方や自分で不調を判断するための「目安となる方法」などについて教わります。


漢方の考え方とは

 まずは漢方の考え方から。

 前篇では、私の不調・副鼻腔炎の相談をしたわけですが、驚いたことが2つありました。

 一つは、「私の副鼻腔炎の原因が陰虚といって体の中が乾燥して熱が籠っている状態によるもので、乾燥に対処する食事や漢方薬を選ぶべし」と言われたことで、もう一つは、「鼻水の中でもねばねばする鼻水の人はねばねば食品を避けるべし」と言われたことです。

 普通にお医者さんに行ったら、「副鼻腔炎の薬を出しましょう」で終わりますし(それは抗生物質の場合がほとんどなので、腸内環境が荒れてしまうわけですが)、鼻水に対しても「鼻水を止める薬を飲もう」とか「鼻水を何とかしよう」という考えになると思うのです。が、そうではなくて、副鼻腔炎になった原因を探り、そこに対処しようとすることや、鼻水の種類によっても、「食べるべき食品や避けるべき食品も違ってくる」ことに、とても驚かされたのです。

「不調があった場合、漢方ではその症状を治すというよりも、症状の原因を探り、原因自体を修正しようと試みます。例えばにらさわさんの場合は、現在副鼻腔炎とのことですが、副鼻腔炎になる原因は陰虚(乾燥)による熱のこもりだと考えられます。そこで、根本原因の乾燥を解消しようとするのが漢方の考え方です」(松浦さん・以下同)

 なるほど。

 「また、乾燥を解消することで、皮膚などのトラブルも一気に解決できるのです」と言われたのですが、「え、なぜわかってしまったの?」と思いました。というのも、私はこのところ、腕がヘンにかゆくなったり、首にポツポツが急にできたりと、珍しく肌に悩みが生まれていたのです。

「それは五臓でいうところの、『肺』が弱っている状態だからです。東洋医学でいう『肺』とは、西洋医学でいう『臓器の肺』ではなく、呼吸によって気や水で体を防御する働きを指します。また、肺は鼻や皮膚、粘膜にも深く関わっています。そして、肺が嫌うのは乾燥。よって、肺が弱っている時は、呼吸器だけでなく、皮膚や髪にも乾燥の影響が出やすくなるのです」

 なるほど!

「ですから、副鼻腔炎になったからと言って、そこだけに着目して、例えば鼻づまりだけを治そうとするのではなく、根本原因の乾燥を解消しようと試みることで、皮膚や髪のトラブルにも一気に対処するというのが漢方の考え方です」

 よって、例えば「眠れない」という症状一つに対しても、個人個人でアプローチ法が違ってくるとか。

「眠れない原因にも、いろんなものがありますよね。ストレスだったり、胃腸の疲れだったり、ホルモンバランスや自律神経の乱れが原因だったり、熱がこもっているせいだったり。人それぞれで原因が違うのに、『眠れない』という症状だけを見て対処しようとするのには無理があります。漢方がアプローチするのは、不調のもととなる原因そのもの。大本を探り、そこから改善していこうとするのが漢方なのです」

 最近はドラッグストアなどでも気軽に漢方薬が買えますが、症状例を参考にして漢方薬を選んでも、その人にとっては合わないものかもしれない、と松浦さん。

「症状は結果であって原因は様々です。漢方薬を買う場合には、自分の体をしっかりと診て判断するのが大事です」

 目からウロコが落ちる思いでした。

2024.10.31(木)
文・写真=にらさわあきこ