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 同じ色の花嫁衣裳、同じようにベールをかけた二人の花嫁が、夫と連れ立って満員電車で移動をしている中で、別の夫によって取り違えられてしまうという奇想天外なストーリーのインド映画『花嫁はどこへ?』。本作は、『きっと、うまくいく』のアーミル・カーンのプロデュースのもと、『ムンバイ・ダイアリーズ』のキラン・ラオによって映画化された。第97回米アカデミー賞・国際長編映画賞のインド代表にも選出されている。

 慣習に従って生きてきたちょっと世間知らずの花嫁・プールと、向上心に満ち、広い世界を目指すジャヤの人生は、「取り違え」という運命のいたずらによって、どう変化していくのか……。フェミニズムの問いもちりばめられた本作の監督、キラン・ラオに聞いたインタビューの前篇。


原案をさらに深めて映画化

――『花嫁はどこへ?』という映画は、アーミル・カーン​さんが審査員を務められたコンテストで原案を発掘されたそうですね。そこから実際に映画化されるまでに、どのような過程があったのでしょうか?

 原案に関して言うと、元の作品も「二人の花嫁」が出てくる話ではあったんですが、もっとリアリティをもって描かれているものだったんです。その中で「取り違え」も出てくるのですが、もっと直接的なストーリーで、花嫁のひとりのジャヤの設定も、ミステリアスなところがなくて、彼女が何を目的として動いているのかもはっきりわかるようになっていたんです。そして、ジャヤを取り違えて連れていった夫・ディーパクの家族たちも、彼女の目的に協力をするという、わかりやすいストーリーになっていました。私は、その原案をもとに、それぞれのキャラクターをもうちょっと発展させたいなという気持ちがあったんです。

――ジャヤは、もっと学びたいという向上心のあるキャラクターでしたが、そんな向上心にディーパク​の家族が寄り添ってくれる内容だったというわけですね。脚本には、スネーハー​・デサイさんと、追加ダイアログにディヴィヤーニディ・シャルマーさんという方が入られていますね。

 原案から、もう少し深みを持たせたいと思っていたところに一緒に組んでくれたのがスネーハー・デサイさんでした。彼女は劇作家でもありますし、テレビ番組の台本もかなり書いている方なんです。経験豊富なので、私の提案するアイデアをどんどんインプットして脚本に盛り込んでくれました。また、いろいろなキャラクターの変更もしてくれましたし、ジャヤとプールという二人の花嫁に関しても、キャラクターに深みを加えていただきました。

 というのも、プールのキャラクターというのが、なんというか世間知らずなところがありますし、外交的ではなかったんです。でも、そんな彼女が最終的に、どのように変化をしたのか、彼女の人生の変遷というものも、スネーハーさんが書き加えてくれました。追加された登場人物であるマンジュおばさんや、マノハル警部補のキャラクターに関してもユーモアを与えてくれました。

 また、ディヴィヤーニディ・シャルマーさんも、警部補のキャラクターをよりユーモラスにしてくれました。

2024.10.06(日)
文=西森路代