この記事の連載
- 「飽きてから」インタビュー 前篇
- 「飽きてから」インタビュー 後篇
部活のような感覚で臨んでいる稽古
──そうやって2人がつくった脚本を受け取って、ジェロニモさんはどう感じましたか?
ジェロニモ 最初にPDFで受け取った時点でもうめちゃくちゃ面白い、と思って。稽古が始まって紙の台本で読み始めても面白いなと実感しているんですが、立ち稽古をやってみると、ロロの皆さんは最初からセリフが全部入っている振る舞いで、素晴らしくて。
データ上で面白かったことが立体的になっていく過程にいま自分が立ち会えている、それを特等席で観させていただいているという喜びとともに、自分もこの作品を構成する一人なんだから頑張らないと、とも思います。稽古帰りの電車で上坂さんと「やっぱ、俳優さんってすごいっすよね」「いやちょっとマジで頑張りましょう」と話しています。
上坂 本当に。
ジェロニモ 芸人が、というか僕がコントで演技するときって、内容さえ合っていれば自分の言い方や語尾にしてしまうことが多いんです。でも俳優のみなさんは、台本上に書いてある文字、一字一句そのまま同じ言葉なのに、その人から出てきた言葉のようにセリフを発している。セリフの中に生きている人間の命を入れ込むのがすごくうまい役者さんだし、劇団なんだなと、毎日感じています。でも稽古場ではビビってる感じは出さずに「めっちゃ面白いっすね」とだけ言ってます。
上坂 私、小学校から大学受験までコンテンポラリーダンスをやっていて、その一環でミュージカルに出たこともあるんですが、大人になって、しかも仕事としてやるのはもちろん初めてなので、めっちゃ楽しくて。本気で稽古のたびに「もっとうまくなりたい」と思うんです。大人になって、そんな本気で思うことってあまりないので、すごくいい部活みたいな感覚です。
三浦 2人もほんと、めちゃめちゃ素敵で面白いですよ。普段のロロとは違う空気をつくってくれています。
三浦直之(みうら・なおゆき)
宮城県出身。劇作家・演出家。2009年、主宰としてロロを旗揚げ。「家族」や「恋人」など既存の関係性を問い直し、異質な存在の「ボーイ・ミーツ・ガール=出会い」を描く作品をつくり続けている。ドラマ脚本提供、MV監督、ワークショップ講師など演劇の枠にとらわれず幅広く活動。2019年脚本を担当したNHKよるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』で第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞脚本賞を受賞。
X:@miuranaoyuki
上坂あゆ美(うえさか・あゆみ)
1991年、静岡県出身。2017年から短歌をつくり始める。2022年2月に第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』(書肆侃侃房)を刊行。「小説推理」「web TRIPPER」にてエッセイを連載中。銭湯、漫画、ファミレスが好き。
X:@aymusk
鈴木ジェロニモ(すずき・じぇろにも)
1994年、栃木県出身。R-1グランプリ2023の準決勝に進出するなど、人力舎所属のピン芸人として活動する一方、歌人として数多くの文芸誌に作品を発表している。第4回・第5回笹井宏之賞最終選考。
X:@suzukigeno
劇と短歌『飽きてから』
公演日程 8/23(金)~9/1(日)
会場 渋谷・ユーロライブ(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)
原案 三浦直之、上坂あゆ美
脚本・演出 三浦直之
短歌 上坂あゆ美
音楽 Summer Eye
出演 亀島一徳、望月綾乃、森本華(以上ロロ)、上坂あゆ美、鈴木ジェロニモ
特設サイトはこちら
2024.08.23(金)
文=釣木文恵
撮影=佐藤 亘