この記事の連載
- 長谷川あかりさんインタビュー 前篇
- 長谷川あかりさんインタビュー 後篇
- 『長谷川あかり DAILY RECIPE Vol.1』
SNSで発信しているミニマムでシンプルなレシピが、「いちど作ってみたくなる」「簡単なのに新しいおいしさ」と話題を集め、フォロワーが急増している料理家・管理栄養士の長谷川あかりさん(28)。7月発売の初のパーソナルムック『長谷川あかり DAILY RECIPE Vol.1』も好評を博している。
『天才てれびくんMAX』の“てれび戦士”をはじめ、子役タレントとして活動した後、若くして引退、結婚、大学進学。そして現在は料理家として『キユーピー3分クッキング』講師なども務める長谷川さんに、これまでの日々を語っていただいた。
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最後の責任を自分が負えば、それでいい
――『長谷川あかり DAILY RECIPE Vol.1』ではインテリア、器使いなどご自身のライフスタイルも紹介されていますね。ベーシックなものを大事にする長谷川さんのレシピのスタンスと通じるものがあって、とても分かりやすく感じました。
ありがとうございます。「これが長谷川です」っていう人間像がレシピとリンクしていたら、より多くの方に参考にしていただけるかな、と。私自身たくさんのレシピ本を読んできましたが、このレシピは誰が作っていて、その人はどういう生活をしてどういうものを食べているかが見えるものが好きだったんです。
もちろん「顔はいいから料理だけ見せてほしい」っていう方もいると思いますが、一方で「へぇ、この人はこういうものが好きで、こういう価値観で普段暮らしているんだ。参考にしようかな」と感じてもらえることで、私のレシピがより身近なものになってくれたらいいなとも思っています。
――長谷川さんのレシピには、「あれ、どういう味になるんだろう?」という意外な食材の組み合わせで、でも実際に作ってみると新しいおいしさが発見できる、という楽しさがあります。
フォロワーさんのコメントにも「長谷川の料理を作る時は、まず最初に信じることが大事だ」とありました(笑)。自分ではそんな突飛なことをしている感覚はないんですけど。でも、そうやって楽しみながら作ってくださっていることは本当にありがたいし、嬉しいですね。
――小学生の頃から子役タレントとしてテレビで活動されていた長谷川さんが、22歳できっぱり引退されて結婚、その後に大学で栄養学を学んで料理家になったという経緯を聞くと、若い時に大きな決断をいくつもされたんだなと驚きます。
いやー、それほどの決断をしたとは言えないですね。もちろん基本的には全部自分で決めてはいるんですけど、たとえば結婚とか仕事を変えるとか、そういうところに関しては結構、人のせいにしているところがあります(笑)。
――人のせい? どういうことですか?
どんなことでも、自分で100%自信を持って決断するって、すごく難しいじゃないですか。私も、物事があまり分かっていなかった子どもの時期に「芸能活動をやりたい!」ってその世界に入って、そのままある程度の年まできちゃった時に、辞めるという決断がやっぱりできなかったんですよね。
ここまでやってきたのにもったいないとも思うし、人から「諦めたんだな」と思われるのもイヤだし、自分自身も負けたような気持ちになるし。だから、辞めるのも苦しい、続けるのも苦しいとなって。
――その時期に結婚が決まったんですね。
21歳の手前で7歳年上の夫と婚約したんですが、結婚となるとライフステージが変わるわけだし、このまま芸能の仕事を続けなくても別にいいのかってふと気づいたんです。それに、「結婚するから辞めます」って言えば、諦めたみたいな見方もされないんじゃないかと、あんまり良くない考えも芽生えて(笑)。
結婚に関しては自分一人のことじゃなく二人で決めることで、言ってみれば紙1枚の話で私自身が変わるわけじゃないから、決断というほど難しくなかったんですよね。
でも、仕事に関しては完全に私一人で決めることだし、いろいろな関わりが複雑に絡んでくるから、より重たく考えてしまっていて。そこに結婚というものが入ってきたことによって、いい具合に背中を押されて、ちょっとそのせいにして(笑)、22歳で芸能の仕事を辞めました。
――確かに、何かの力を借りることで決断できる時もありますよね。
決断に迷っている人って、きっとすごく真面目なんですよね。でも、決断のきっかけはもっと人のせいにしちゃっていいんじゃないかな。
最後まで人に責任を押し付けちゃいけないけれど、誰かや何かがきっかけで「じゃあ仕方ないか(笑)」みたいな感じで方向転換することは全然悪いことではないと思うし、そうやっていかないと、多分心がすごくしんどくなる。最後の責任を自分が負えば、それでいいんだと思います。
2024.08.18(日)
文=張替裕子 (Giraffe)
撮影=杉山秀樹