この記事の連載

短大から大学へ、管理栄養士の資格を取った理由

――念願かなって栄養学を学び始めたわけですね。

 でも、実際に学んでみると、栄養学って期待していたものと違っていたんですよ。

 私、もっとポップなものだと思っていたんですよね、栄養学って。「この栄養素を摂るとお肌がピカピカになります」とか(笑)、何か魔法の薬を教えてくれるような学問をイメージしていたんです。

――なるほど、栄養学と聞くと確かにそういう期待をしてしまうかも。

 つまり、巷では栄養学のそういう側面ばかりがもてはやされているんでしょうね。「美肌に効く」とかのほうがキャッチーだし面白いから。

 でも実際に大学に入ったら、もう全然違う。まず、食べ物は薬じゃない。

 当たり前なんですけど、何かを食べて直ちにどんどん体が変わるようなことがあってはならないし、そういうものじゃないところが食べ物の良さなんだと。だから、想像していたような、分かりやすい面白さのものじゃないんだって初めて気づいたんですよ(笑)。

 それで短大に2年通ってようやく分かったのが、栄養学はまだ何も分からないってことで(笑)。最低でもあと2年は勉強しないとだめだと思い、そのまま大学に編入して学び、管理栄養士の資格を取りました。

「おいしいから続けてみよう」からつながる健康が理想

――大学卒業後、管理栄養士としての仕事ではなく、レシピ発信の道を選んだのはどうしてですか?

 4年間勉強しましたけど、皆さんに分かりやすく「栄養学ってこういうものだよ」って伝えられるほどの知識はまだ会得できてないと感じました。そう考えると、レシピってすごく良い存在だと思ったんです。

 レシピという日常で一番身近な媒体を通して、私が栄養素のバランスが何となく取れる料理を発信し続ける。それを試した人が、「あ、長谷川のレシピはおいしいから続けてみよう」って何となく継続してくださることによって健康になっていく。それが一番理想的なんじゃないかなって。

――管理栄養士という肩書きにこだわらず、日々のレシピから発信するということですね。

 やっぱり「管理栄養士です」っていう立場でものを言うと、結局難しい話になってしまって皆さんに響くものじゃなくなっちゃう。それより大スターが「毎日玄米を食べています」って言ったほうが興味を引くわけで(笑)。

 せめてレシピを届ける人間としてちょっとでも影響力を持って、バランスの良いおいしいレシピをコンスタントに発信していく、それをコンスタントに作っていただくというほうが、行動変容につながるんじゃないかと考えています。

長谷川あかりさんインタビュー【後篇】を読む
長谷川あかりさん【冷たい麺レシピ】を読む

長谷川あかり(はせがわ・あかり)

1996年埼玉県生まれ。料理家、管理栄養士。10歳から子役・タレントとして活動、『天才てれびくんMAX』(NHK教育テレビ、現Eテレ)をはじめ、さまざまな番組に出演する。大学で栄養学を学んだ後、SNSで始めたレシピ投稿が大反響を呼び、人気アカウントに。現在、雑誌、Web、テレビなどで幅広くレシピ開発を行っている。近著に『長谷川あかり DAILY RECIPE Vol.1』(扶桑社)、『いたわりごはん2 今夜も食べたいおつかれさまレシピ帖』(KADOKAWA)、『材料2つとすこしの調味料で一生モノのシンプルレシピ』(飛鳥新社)など。

長谷川あかり DAILY RECIPE Vol.1

定価 1650円(税込)
扶桑社
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

次の話を読む人気料理家になった長谷川あかりが 『天才てれびくん』ファンに 現在進行形で「感謝」している理由

2024.08.18(日)
文=張替裕子 (Giraffe)
撮影=杉山秀樹