子役タレントとして10代は『天才てれびくん』などで人気を集めた後、22歳で引退、結婚、大学進学。現在は料理家・管理栄養士としてSNSやテレビ、雑誌でレシピを発信する長谷川あかりさん(28)。
インタビュー後篇では、「シンプルで作りやすい」「意外な組み合わせが納得するほどおいしい」と評判の長谷川さんのレシピの秘密を伺った。
》長谷川あかりさんインタビュー【前篇】を読む
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私のレシピを元に「我が家の料理」を育ててほしい
――長谷川さんのレシピは、ミニマムな材料や調味料で疲れていてもパパッと作れるような、体にも心にも優しい料理が多いように感じます。レシピを作るうえでルールのようなものはあるのですか?
ルールは特に決めていませんが、自分が生活している範囲内だと自ずとこうなるっていうのはありますね。趣味の領域の料理と家事の領域の料理は全然違うと思っているので、自分が家事としてできる範囲の料理となると、統一感のようなものはできていっているかもしれません。
やっぱり、家事の料理は生活に馴染んでいないとあまり意味がないと思うんですよ。調理器具とかおいしい調味料とかに依存した料理になってしまうと、再現性が低くなって多くの方に実践していただけなくなる。
広く多くの方に作っていただいて、みんながより心地よく生活できて健康になっていくという私の理念からちょっと外れてしまうので、なるべく削ぎ落とした状態でレシピを提供したいと考えています。
――レシピどおりに作ればおいしいのはもちろんなのですが、「ちょっとこれを足してみようかな」「この野菜に替えてみたらどうだろう」とアレンジを楽しめるのも長谷川さんの料理の魅力です。
あ、そう言っていただけるのは嬉しいですね。やっぱり家庭料理だから、こちらが完成度100%、120%のレシピを出しても、120%で作っていただけないことがほとんどだと思うんですよ(笑)。もう全然それで良くて。
こちらも80%ぐらいの状態でお渡しするから、残りの余白の部分は好きに調節していただいてかまいませんって。そのほうが家庭料理としては残っていくし、私の料理を元に「これが我が家の味です」って別の料理がそれぞれに育っていく過程を見たいという気持ちがあります。
――確かに最初は120%完璧に作っても、続かないですよね。
そうそう!(笑) それに、120%ではなくできるだけ削ぎ落とした状態で紹介すると、簡単そうに見えて「1回作ってみようかな」って思ってもらえるんです(笑)。120%のレシピを作って出しても、「なんか調味料がいろいろ必要」とか「材料がいっぱい入ってて大変そう」って思われて作ってもらえなかったりするので。
「レシピどおりにしか作れない」っていう悩みを抱えていらっしゃる方も結構多いですが、余白の20%だけでも「私はこれが好きだから入れてみようかな」って考えられる幅があったほうが、「これは私の料理」って自信を持てるようになっていただけると思うんです。
――どんどんアレンジしてもらってそれで家庭に定着していくほうが、長谷川さんにとっても嬉しいと。
今はミールキットとか合わせ調味料とかもたくさんありますし、それはそれでもちろん便利で良いところもあると思いますが、一方で家庭それぞれの味っていうものがなくなってきているような気がするんですね。
でも、私はやっぱりその家でしか食べられない味とか家庭料理みたいなものが残っていってほしいなって思っていて。
栄養学の面で言うと、80%のミニマムなレシピを、このまま作ってもおいしいし塩分量も脂質も控えられるよ、これで十分だよっていうところでお渡しする。
もっとガッツリ食べたい時は自由に足してもらっていい、健康的にしたい時はさらに削ぎ落としてもらってもいいし、作る人でコントロールができるようにしておきたいと思っています。
完成度100%、120%のレシピから要素を減らしていくのは大変だけど、余白があれば足すのは簡単ですから。
2024.08.18(日)
文=張替裕子 (Giraffe)
撮影=杉山秀樹