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食べられなかった高校時代が料理のきっかけに

――結婚後に短期大学に入学し、さらに4年制大学に編入して管理栄養士の資格を取得されたんですよね。栄養学を学びたいと思ったきっかけは何ですか?

 高校生の頃なんですけど、子役から大人の役者に切り替わるタイミングというか、なかなかオーディションに受からなくて、結構気持ち的に落ちてご飯も食べられない時期があったんですね。

 実家の食事も喉を通らなくて、でもやっぱり何か食べなきゃいけないから、何だったら食べられるだろうってレシピ本や料理雑誌を見始めて。

 割とミーハーな人間なので(笑)、「こんなステキなご飯だったら食べたいな」と思えるような料理というか、自分の食欲のツボを探すためにあれこれ見ているうち、「こんな料理があるんだ」とか「これどんな味がするんだろう」って興味が湧いてきたんです。

――最初は食欲を取り戻すための作業だったんですね。

 はい、そこから「作りたい」というほうに気持ちが向かっていったんです。作りたい料理をどんどん作っていったら、家族や友だちがすごく喜んでくれて。自分がやりたくて作っているのに、なおかつ本に書いてあるとおりにただやっているだけなのに(笑)、こんなに人に喜んでもらえるなんてすごい!ってびっくりしました。

 「どうやったらオーディションに受かるのか」とか、「どうやったら人に求められるのか」といったところですごく気持ちが落ちていた時期の私にとっては、「書いてあるとおりに料理するだけでこんなに人に喜んでもらえる世界があるのか!」ってすごく嬉しくて。

 自分が必要とされている感じをちょっと思い出したというか、自己肯定感のようなものを少しずつ取り戻せるようになりました。

――人に喜ばれることがエネルギーになったんですね。

 芸能活動をしていた頃は、何をやればオーディションに受かるのかとか、正解がないことに悩んでいました。

 でもレシピ本は、開くとそこに答えが載っている。「こうしてください」と書いてあるものに沿って作ればちゃんとおいしい料理ができて、めちゃくちゃ喜んでもらえる。

 「すごい楽しいじゃん!」みたいな感覚があったので、それをみんなにも味わってもらいたいという想いが、今の自分の仕事につながっているところはあります。

「ちょっと頑張って大学に行ってみたら?」

――料理を作ることが大好きなのに、調理ではなく栄養学を学ぼうと決めたのはなぜですか?

 まず「大学に行きたい」っていう気持ちがあったからなんです。高校卒業後は芸能活動に専念していたので大学に行ってみたいという想いがありましたし、結婚した時に夫が「あかりちゃん、ちょっと頑張って大学に行ってみたら?」って言ってくれたこともあって。

――ご主人が?

 はい。それまでずっと同じことをやってきた人生だったので、「世の中にはいろんな考え方があるし、他にやりたいことがすぐ見つかるわけじゃないだろうから、大学で何かを学んで、ちょっと時間をかけてやりたいことを探してみてもいいんじゃない?」って。

 それで自分が興味のある“食”とリンクする分野を学ぼうと、まずは短大の栄養学科に入学しました。

2024.08.18(日)
文=張替裕子 (Giraffe)
撮影=杉山秀樹