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“ひとり”に優しい、おいしいイタリアン

 なんと言っても、ここはお酒に合うつまみ(前菜)がおいしい! しかも野菜や魚介系が充実しているので気持ち的にヘルシー(ここ大事!)。そんなわけで、多少飲みすぎても胃袋的に±ゼロということでよし! とできるところも気に入っています。

 今回オーダーしたのは前菜の盛り合わせで、タコとウィキョウのサラダ、揚げナスのバルサミコ酢漬け、生ハムを巻いたパネッレ、キノコのマリネ、真鯛のカルピオーネ(甘酢漬け)など。お皿からか溢れんばかりに盛られて出てきたこれは、なんとひとりでいらしたお客さんに特別に盛り合わせてくれるもの。

 通常は、それぞれに前菜としてオーダーできますが、ひとりだといろいろ味わえないでしょ、と優しいシェフ! こちらはパスタも結構大盛りなので、ひとりのお客さんにはハーフサイズにしてくれるます。なんともありがたい! でも私はひとりでもときどき欲張って普通盛りにし、やらかしておりますけれど、おいしいのでぺろりと食べられちゃうんですよ、これがまた。

 パスタは、どれもおいしいですが、個人的にトリュフをふんだんに削ってのせた贅沢なパスタが大好きで、以前、友人たちと行ってシェアして以来、次は絶対独り占めして食べると心に決めているもの。

 あとはシェフが修業時代、師匠に教わり、いつか自分のお店を持つことができたらメニューに加えたいと思ってきた思い入れのある、ウニのパスタ。これは海の旨みがたっぷりのソースまで全部食べ尽くしてほしいので、パンを注文してしっかり拭って最後までどうぞ。

 そうそう、今回あらためて取材させていただき知ったのですが、おいしいと思っていた太めのピーチというパスタなどは、シェフの手打ち麺でした。知らなかったー。どうりでおいしいわけですね。

 これらパスタに合わせるのは、イタリアの南の方のワイン。なんだか、海が見えるところでのイタリアンというと、シチリアのほうのワインを! と思ってしまう単純な私ですが、シェフもそんな感じのものをいつもおすすめしてくださいます。

 今日は、中原めいこのあの名曲を思い出す、フルーツモリモリのエチケットがかわいいこちらを。それからイタリアのクラフトビールなんてものもいただきました。シェフは、イタリアのエミリアロマーニャや都内のイタリアンレストランで修業してきたこともあり、料理はもちろん、お酒もやっぱりイタリアものがメイン。ビールも、もちろん!

 それもそのはず、シェフ ゆうくんがビールが好きだからというシンプルな理由から、お店の名前が“ビールの醸造場”という意味のイタリア語をつけたくらいですから。

 気軽で気張らない、イタリアの港町にあるようなここは、疲れたときの私の憩いの場所。住宅街の中で、ポツンと灯る明かりの先には、賑やかな笑いと、おいしい料理とお酒があります。そして、にこやかでイケメンのシェフ越しの海! あぁ、言うことなしのひとり飲みです。

IL BIRRAIO(イル ビッライオ)

所在地 神奈川県鎌倉市長谷2-7-14
電話番号 0467-33-4803
営業時間 12:00~14:00L.O.、18:00~21:00L.O.
定休日 不定休
Instagram @ilbirraio_kamakura

赤澤かおり(あかざわ・かおり)

料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny

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Column

赤澤かおりの鎌倉ひとり飲み

鎌倉で暮らしながら、料理編集者として飛び回る毎日を送る、赤澤かおりさん。どんなに忙しくても赤澤さんが元気いっぱいなのは、地元・鎌倉でお酒を飲む時間。このシリーズでは女性のひとり旅も多い鎌倉で、「ひとり飲み」に優しいお店をご紹介します!

2024.08.08(木)
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美