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◆桜桃

 そしていよいよ、メインとなるグラスデザートが登場。主役は、桜桃(さくらんぼ)です。庭のどくだみの花とチコリがあしらわれた姿の、なんとナチュラルで美しいこと!

 「さくらんぼの季節にはどくだみの花が咲いているので、季節を感じてほしくて」と、さわのさん。トップには、ベリーと赤ワインのアイスクリームと、ゴルゴンゾーラチーズをはさんでカカオニブを貼りつけたマカロン、ほのかにオレガノを香らせた黒胡椒のメレンゲを、アメリカンチェリー、ウルトラベリー、そば茶のクリーム、歯触りのよいしょうがのクッキーとともに。

 ベリーやさくらんぼの甘酸っぱさやフレッシュ感、果実味に、ゴルゴンゾーラチーズの力強さや塩気、むせるほどにスパイシーな黒コショウ、しょうがの辛み、そば茶の香ばしさがインパクトを与え、織り成される鮮やかなコントラストと大人なハーモニーに、ワクワクが止まりません。

 「アクセントを加えると、フルーツの香りが生きてきますね。そのうえで素材と素材、甘いものとしょっぱいものをチェーンのように組み合わせて、全部が架け橋となってどこを食べてもおいしくなるように構成しています」。

 その下のグラスの中で美しい層を織り成すのは、カルダモンが清々しく香るチョコレートムース、さくらんぼ、エルダーフラワーのジュレ、洋梨のジャム、カカオのスポンジ、薄いチョコレート。少し空間を開けたグラスの底には、アメリカンチェリーのコンポートが注がれています。

 口に運ぶと、気品高く華やかなエルダーフラワーのジュレや奥深いチョコレートムースが、舌に残るスパイシーさや塩気を和らげ、さくらんぼのみずみずしさと甘酸っぱさへ導いてくれるかのよう。豊かな果実味が体じゅうにしみ渡り、ひとつの物語を読み終えたかのような楽しさと心地よい余韻が後に残ります。

 ペアリングのドリンクは、いちじくのピュレにほうじ茶、赤じそのジュースを合わせて。マイルドな果実味がさくらんぼに寄り添い、後口に香ばしさがやさしく漂います。

2024.06.19(水)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵