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その瞬間にその場でしか味わえない、作りたてのおいしさを味わうというデザートの醍醐味。その魅力を存分に堪能できる、デザートコースを提供するお店が増えています。
カウンターに腰かけ、シェフの言葉に耳を傾けながら目の前で仕上げられるひと皿、ひと皿に胸を高鳴らせ、香りや温度、音を感じ、味わいを楽しむひとときは、まさに至福の時間。
とっておきのデザートコースを味わいに、いざ!
2024年末にオープンした「カカオ」が主役のコースとは?
日本橋に誕生した実験的で持続的な場
2024年12月、魅力あふれる個性的なデザートコースを味わえるお店が、またひとつ誕生しました。それが、日本橋兜町の渋沢栄一邸宅跡地である日証館にオープンした、「nib(ニブ)」です。シェフを務めるのは、同じ建物内のチョコレート&アイスクリームショップ「teal」も手掛ける、眞砂翔平(まなご しょうへい)さん。「nib」では、カカオの新たな可能性を探求するラボとして、ショコラティエの枠を超えた実験的かつ持続的な取り組みを行っていくといい、期待が高まります。
まずは、カカオ豆のローストを体験!
オープンキッチン形式のラボの前に設えられたシェフズテーブルは、8席。注目は、「チョコレートだけではないカカオの魅力や表現を詰め込みました」と、眞砂シェフが語る「カカオのデザートコース」です。席に着くと、テーブルの上には鉄板やトング、木の鉢が。「まずは、カカオ豆のローストを体験していただきます。鉄板に火をつけますので、砂時計が落ちるまで、ご自身で混ぜながらローストしてみてください」と、眞砂シェフ。なかなかできない体験に、胸が躍ります。
カカオ豆に焦げ目がついてきたら、そのうちひと粒は、カカオハスク(カカオ豆の種皮)を水出しし、フィルターにかけてから温めたお茶に入れられ、「水出しカカオの豆茶風」に。3時間ほどかけてじっくり水出しすることで、えぐみや酸味が抑えられるといい、カカオのおだやかでフルーティな味わいが豊かに広がります。
そして、残りのカカオ豆は、用意された木鉢へ。自分自身の手で、木の棒を使ってグリグリと砕き、カカオハスク(皮)とカカオニブ(胚乳)を分けていきます。すると、ローストされて立ち上るカカオの香りが一層力強く放たれ、鼻腔を直撃。「うわあ、いい香り!」と、思わず声を上げてしまいます。
2025.01.21(火)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵