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カカオの新たな価値と可能性を

「世界で生産されるカカオのうち、約9割はチョコレートになります。それとは逆に、僕はチョコレートを約9割使わず、今回のカカオのコースを組み立ててみました」と語る、眞砂シェフ。チョコレートをつくる際、1トンのカカオ豆を使用すると、だいたい100~150キロのカカオハスクが出るといい、通常は廃棄されてしまうそう。「でも、ただ捨てるのではなくて、煮出して香りを取り出すこともできればお茶にもでき、土壁に練りこむ素材にもなります。そうして無駄なく使用することで、カカオの新たな価値と可能性を広げ、自分なりに表現したいと思いました」

 実際に木に実るカカオを自分の目で確かめ、カカオという素材について深く知るべく、コスタリカのカカオ産地に足を運んだ経験からも、大きな影響を受けたという、眞砂シェフ。「カカオの品種も約1,200種保存されていて、それぞれに味、形、色などが異なっていて、驚きました。農園では、テイスティングの際にカカオ豆を簡単にローストし、豆挽きでペーストにしたところにハチミツをポンッと入れて出してくれました。僕にとっては、チョコレートにするよりもそのほうがおいしくて。なんとかそれを体験していただけないかと思い、今回のコースに取り入れてみました」。

 カカオの真の価値はチョコレートにすることだけでなく、「食体験」だと語る、眞砂シェフ。自身がコスタリカで”本物の“カカオを目にし、味わったときのギャップや感動を共有する、ここでしか味わえない特別なデザートコースは、味わう人に発見と喜びをもたらしていきます。

シェフ 眞砂翔平(まなご しょうへい)さん

1988年、和歌山県生まれ。トップオブパティシエインアジアにて、アジアベストショコラティエ受賞をはじめ国内外のコンクールで多数受賞。2020年までフランスのショコラティエ「パスカル・ル・ガック」の海外初店舗である「パスカル・ル・ガック東京」を立ち上げ、シェフパティシエを務める。2021年に東京・日本橋兜町の渋沢栄一邸宅跡地「日証館」にチョコレートとアイスクリームのお店「teal」を開業し、新たなチョコレートとアイスクリームの価値を創造している。2024年12月、日証館1階にカカオの可能性を追求するラボ「nib」を開業。

nib(ニブ)

所在地 東京都中央区日本橋兜町1-10 日証館1F
電話番号 非公開
営業時間 10時~、12時~、14時~、16時~
定休日 水曜
Instagram @nib_tokyo

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