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「自分が無意識でやっていたことがダイレクトに伝わってきた」

――たしかに不倫の描写は生身の人間が演じるとより生々しくなるので、不倫夫への風当たりは漫画よりも強くなるのではないかと思いましたが、岡田さん演じる二也にあまり嫌悪感を感じませんでした。

 そうなんですよね。一方で、高畑さん演じる一子ちゃんの二也に対する甘え方は、まるで親を求めているかのような、親に対してできなかった甘え方をしているように感じました。そしてそんな一子のことを理解しながら、二也は受け止めてくれているんだろうなと感じました。さらに二也は西野七瀬さん演じる美月とのやり取りのターンから、表情や言葉がどんどん出てくるようになってくる。掴みどころのない人の、人間らしい姿が垣間見れて面白かったです。どれも自分で考えて描いていた人物像だけど、実写になってより私も登場人物の理解が深まった感じがします。

――ほかに気になったシーンはありましたか?

 一子が女性用風俗を利用したことが、二也にバレたあとのやり取りです。映像で観ると、二也が一通り非難したあとに、結構一子も強い言葉で言い返していて。結末は知っていたのに、あれ、この二人、大丈夫かな? と心配になって観てしまいました。ここは一子の真剣さ、切実さも伝わるいいシーンでしたね。二也がいなくなったあと、戻ってきてくれたときはなんだか泣けてしまいました。漫画のときは「すごく不器用な二人ですね」という感想をいただくことが多かったのですが、私はそういうつもりはないまま描いていたんですね。でも、映像で観ると、みなさんが仰るようにすごく不器用な二人だなと思いました(笑)。

――たしかに、高畑さんと岡田さんが演じた一子と二也は、よりじれったさ、不器用さが増長して感じられました。

 大丈夫な素振りというか、大丈夫にしようと二人とも頑張っているんだけど、ちょっともろいというか。友達のように仲が良い二人なんだけど、それゆえに不穏でもある。不倫のことを抜きにしても、お互いがお互いに気を遣っている雰囲気が一話から感じられました。監督の演出意図なのか、俳優の意図なのかわからないですが、改めて自分が無意識でやっていたことがダイレクトに伝わってきて本当に面白かったです。

2024.06.14(金)
文=綿貫大介
写真=佐藤 亘