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老犬を遠隔で“撫で撫で”

――あとがきに老犬を看取ったあと、その思い出を時間をかけて振り返る中で「『ただただ悲しいこと』から『絶対に忘れたくない大切なこと』に変化した」と書かれていました。本作は、大切な存在をなくした方がこういう心持ちになれたらと思う作品ではないかと思います。

つづ井 そうなれたらうれしいです。

――描き上げたとき、特別な感慨がありましたか?

つづ井 老犬と介護の思い出をちゃんと一冊にしていただけてうれしかったです。今まで出させてもらった本とはまた違うテイストなので。じつは、表紙に関しては私のわがままで、担当さんとデザイナーさんにちょっと無理を言ってしまったんです。表紙のAのところだけ素材が違ったらさわりたくなる……たくさん撫でてもらえるかなと思って。

――これ、そういう意図だったんですね、すごい! Aちゃんを撫でられてうれしい!

つづ井 本作の中でも描いたんですけど、Aがなかなか眠れないときに遠隔でみんなに撫でてもらったんですよ。

――ツイッター(現X)のスペースで、リスナーのみなさんが手のスタンプで遠隔撫で撫でするエピソードですね。なんて素晴らしいアイディアだろうと思いました。

つづ井 Aは撫でられるのが好きな犬だったと思っているので、みんなに撫でてもらえたらと。私の自己満足なんですけど、こんな形でかなえてもらえて。ちょっとツルツルになったらどうかなと思っていたんですけど、こんなきれいな箔押しにしてもらえるなんて。とても大切な一冊になりました。

――これまでのつづ井さんファンはもちろん、「老犬」というテーマを通して多くの新しい読者が手に取り、長く愛される一冊になるのではないでしょうか。

つづ井 ありがとうございます。たくさんの方に読んでいただけたらうれしいです。

つづ井

元気で楽しそうな姿が評判を呼んでいる。作品に『まるごと 腐女子のつづ井さん』(文春文庫)『裸一貫! つづ井さん』『とびだせ! つづ井さん』(文藝春秋)。

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老犬とつづ井

定価 1,430円(税込)
文藝春秋
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2024.04.20(土)
文=粟生こずえ