好きなものに我を忘れるほどのめり込んだり、女子同士で日常をわちゃわちゃ楽しむ姿が多くの共感を呼んだコミックエッセイ『裸一貫! つづ井さん』。

 最終巻となる5巻が発売され、「裸一貫」シリーズが完結した今、改めて思うこと、絵日記に描いたエピソード、描けなかった胸の内、そしてこれからのことを、著者のつづ井さんにたっぷりお聞きしました。

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「裸一貫」という言葉に込めた決意

――『裸一貫! つづ井さん』の連載が始まったのは2019年5月でした。1巻が発売されるタイミングで、「裸一貫」シリーズをスタートするにあたって決めたことをnoteで発表されていましたが、その時はどういう心境だったのでしょう。

 未婚であることやパートナーがいないことを自虐しないっていうのは、それまでもぼんやりと思っていたんですけど、改めて決意したのは『裸一貫!つづ井さん』というタイトルに引っ張ってもらえた部分が大きいです。

 タイトル案を出してくださったのは担当編集の白川さんなのですが、1話目を描いて覚悟が決まった感じです。

 前作は『腐女子のつづ井さん』というタイトルだったので、基本的にはBL好きネタ、オタクネタに限定していたのですが、このタイトルになったことで、ありのままの日常生活を描けるようになったんですよね。

 「オタクです」「BL好きです」って別に言わなくても、私が普通に楽しく過ごしている様子を絵日記にするだけで喜んでくださる人がいることがわかったのが、私としてはとても嬉しかったです。

――自分のなかで決意するだけでなく、読者に対してもあえて所信表明をされた理由は?

 私は文章を書くことに苦手意識があるんですけど、自虐をしないと決意したのは、自分のなかでも大きな変化といえるので、今の気持ちを文章にして数年後に読み返したいと思ったんです。予想以上のリアクションをいただいて、改めて気の引き締まる思いがしました。

――完結して、どんなお気持ちですか?

 あっという間で、「5巻も出たんだ」っていうのが素直な気持ちです。

 これを描いていた数年は、人生的にもいろんな変化がありました。一番大きかったのは実家に帰ったことですが、新型コロナウイルスが流行して友人たちとの関わり方も変わっていくなかで、自分が楽しみたいことや好きなものと改めて向き合えた時間だったのかなって思っています。

――実家に戻るという選択によって、友だちとの距離が離れて、絵日記がどうなっていくのか不安はありませんでしたか?

 そもそも私の絵日記は、描くために面白いことをするのではなく、何か面白いことがあってから描くスタイルなんです。なので今だから言えるのですが、もしかしたら絵日記を描けないかもしれない、と思った時期もありました。

 実家では老犬の介護をしていたのですが、友人と遊ぶようなイベントも特になく単調な日々で、このまま40年後も同じ生活をしている自分の姿が浮かんじゃって。

――人知れず、そんな不安に陥っていたのですね。

 そうなんです(笑)。絵日記は、私にとって大きな楽しみのひとつになっていたのですが、新しく描ける楽しいことなんてもうないんじゃないかって、寂しくなったりもして。誰もが先の見えない不安を抱えていた時期でもあったので、友人たちに相談することもなかったんですけど、あれはちょっとしんどかったなって、今になって思います。

 その不安をどうやって乗り越えたかというと、これは絵日記にも描いていないことなんですけど、新しいコンテンツにハマって。おかげで、面白いことってまだまだいっぱいあるんだなって思えたんです。

 学生のときみたいにこんなにもテンションが上がって、心躍るものにまた出会えたこと自体がすごく嬉しくて。自分の生活に対して前向きな感情が生まれて、日が差したような感覚でした。

大人になってもこんなことをやってもいいんだ

――コロナ禍も重なって、自由に会えなくなってからのみなさんの企画力というか、楽しもうとする姿は感動的ですらありました。

 私が言い出しっぺになることが多いんですけど、みんな好きなようにやる子たちなので、助けられています。好きなようにやりすぎて、結果的に私が言い出したこととは、まったく違うものになっていたりするんですけど(笑)。

 自分のこれまでを振り返っても、5人組で仲がよかったことってないし、もともとグループで行動するタイプではないんです。5人ってディズニーランドとかに行っても奇数だし、みたいな。だから「5人でずっと仲がいいってすごいよね」とよく言い合っていて、「私たち、5人もいたんだ!」ってびっくりしてます(笑)。

――こんなに仲がいいからこそ、つづ井さんが実家に帰ることを伝えたとき、Mちゃんが「いやじゃいやじゃ」と駄々をこねたのは、笑えるけれど、ぐっとこみ上げてくるものがありました。

 実はあれ、1回だけじゃないんです。絵日記では、初めて伝えたときの様子を切り取っているんですけど、その後も私が「実家に帰ったら……」みたいな話をすると、同じテンションであれをするんです。外でもやろうとするから、みんなで止めたこともありました(笑)。

 友人が結婚したり、子どもが生まれたり、夫の実家のほうに引っ越したり、年齢的に何かと変化が起こりやすい時期でもあるし、諸先輩方に「仲良くやっていられるのも今のうちだよ」みたいに言われたりして、私もそういうもんだと思っている節がありました。

 だけど、Mちゃんが大暴れしてるのを見て、大人になってもこんなことをやってもいいんだって、勇気づけられましたね。

――連載中はいろんな変化があったそうですが、友人との関係性はどう変わりましたか?

 前よりも友だちのことが大好きになりました。前からかなり好きなほうだと思うし、人生の優先順位として友だちの存在は高いところにあったんですけど、会いたいときにすぐに会えなくなったので、遊べる1回をより大切に感じるようになりましたね。

2023.03.29(水)
文=兵藤育子