諦めていたあれこれを、東京で全部やってみよう
――5巻のあとがきで触れていますが、今後の大きな変化として東京で一人暮らしを始めるそうですね。
実家で飼っていた犬の最期を看取ることができて、次は何をしようってなったとき、イメージ的に一番遠かったのが東京に住むことだったんです。とはいえ、不可能なことではないよなとも思って。一念発起ではあるんですけど、それほど不思議ではない心境の変化だったりもします。
――単行本の発売イベントとして各地で着ぐるみチェキ会をしたり、大ファンだった和山やまさんと対談をしたり、この作品によって世界が広がったことも東京行きと関係があるのでしょうか。
それも大いにあります。漫画家ってリモートワークにめちゃくちゃ適したお仕事だけど、地元にいるとぱっと外に出られなくて、逃してしまうチャンスも多かったんです。
なので諦めていた数年分のあれこれを、東京で全部やってみようと思っています。絵日記を描いていなかったら経験できなかったようなことも、どんどんやっていきたいですね。
東京に出てくるとき、友だちを作ることを目標にしたのですが、早速5人できて、そのうちのひとりが和山先生なんです。「友だちになってください」って言ってなってもらい、たまに遊んでもらっています。
――「友だちになってください」ときちんと言うのが、なんかいいですね。
そうなんです! そういえば、「友だちになってください」って言ったことないなと思って。
学生時代からの友人って、友だちになろうなんてわざわざ言ってないし、社会人になると新しい友だちができにくいので、言ってみようと思ったんです。だからこっちに来てできた5人の友だちは、みんな「友だちになってください」と言った人たちです。
――「裸一貫!」シリーズの後、新しいシリーズの構想はありますか?
またタイトルの影響を大いに受けてしまう気がするので、今は慎重にタイトルを検討しつつ考えている段階です。
東京に出てきて久しぶりにひとり暮らしを始める人生の流れを、「裸一貫」のときよりもさらに自由にというか、ジャンルを限定しないで描けたら嬉しいなって、私としては思っています。
つづ井(つづい)
一介のオタク。元気で楽しそうな姿がツイッターで評判を呼んでいる。デビュー作『腐女子のつづ井さん』(KADOKAWA)は「第20回文化庁メディア芸術祭」推薦作品に選ばれた。
Twitter @wacchoichoi
裸一貫!つづ井さん5
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文藝春秋
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2023.03.29(水)
文=兵藤育子